八代ジャズ


八代亜紀さんがジャズアルバムを出したとき、「へーー、おもしろそう」と思いつつ、YOU TUBEで試しにと”Fly Me to The Moon”を聴いて見たりはしてみました。


これはプロデューサーの力量が問われるアルバムなんだろうなぁと漠然とした印象をもっていたのですが、その八代さんがニューヨーク”Birdland”に出演したのだとか。NHKの番組で取り上げていたのを録画して昨日観ることができました。


演歌のことは全く未知で、ものすごく歌の上手い方らしいということくらいは知ってはいたのですが、番組を観た印象は、やっぱりjazzの基礎体力をつけるだけの時間が、本番に臨むまでにあまりにも少なすぎたんだろうなぁと思われました。


歌が上手いという事実はすべての楽曲を上手に歌えるということにつながるわけではありません(美空ひばりのように強烈に耳がよくて再現能力の高い天才的な歌い手もいますが)


4beatのbeat感が身体に馴染むにはとっても時間がかかります。演歌系の歌手の方々が譜面をどこまで読む力を持ち合わせているのかにも問題があります。


そう、日本のポップス 演歌系歌手ってどれくらい譜面を読めるんでしょう?学生時代に南沙織の前座をやったことがありました。リハーサルでたまたま見た南沙織の譜面台には歌詞だけが大きく書かれていてびっくりしたことがあります。当時学生だった私は「ミュージシャンの譜面は五線譜で書かれているもの」と思い込んでいて、コンサートで歌詞を忘れないためのアイドルの譜面はこういうものなのか・・・と驚いたのです。


もちろん譜面を読める歌手が人々を感動させるわけではないこともよく承知しています。昔のジャズマンでも譜面を読めないミュージシャンはたくさんいました。感覚でコードを感じ取って理論を知らなくても素晴らしいアドリブをとれるジャズマンなど当たり前のようにいました。ただ、ジャズの基礎体力ができていれば、小節感覚やコード進行感覚も身体で感じることができるわけです。そういう基礎体力はジャズの演奏を繰り返すことで身についていくものなのです。


さらに、英語で歌詞を伝えるという高いハードルもあります。


個人のコンサートでファンのためだけに英語の歌を歌うのであれば問題なく受け入れられる英語も、NYでネイティブに伝えるには長い時間をかけたレッスンが必要になることは必定です。



ってなわけで、私のような心の狭い、偏執狂なjazzファンの目から見ると、八代さんのように日本を代表する歌手がジャズを歌うのであれば、ジャズでも「世界に誇る」歌い手として世の中に出て欲しいと思ってしまうのであります。チャカ・カーンが、スティングがジャズを歌ってもジャズファンをうならせるように。