脱「辛口のお酒ください」


今回の雑誌dancyuの特集が”脱「辛口のお酒ください」のススメ”なんだと聞き本屋で立ち読みしてきました。


このサイトをご覧いただいている方はご存じのように、板前日記では十年以上にわたって「辛口くださいはやめよう」「甘い辛いだけでお酒を区別するのはいかがなものか」「辛いのがお酒の正しさではない」と手を変え品を変え、時にはオブラートに包み、時には「辛口」で辛口信奉にもの申してきました。やっとメディアが追いついてきた。。。テな風に鼻高々になるつもりなんぞ全くなく、時代の扉が少し開くのではないかと密かにわくわくしました。


ざっと読むと、私同様、心ある酒蔵、酒販店、料理店の皆さんは一様に「辛口ください」に頭を悩ませていたのだということを改めて認識したわけです。みぃぃんな困っていたのです「辛口ください」に。ただ困っていても、「お客さんだから」と、私のように目をむいて教育しようなどとは思わぬ、穏やかで紳士的な方々ばかりがこの業界ではひっそりと困っていたというわけです。


それでも世間一般の消費者は「辛口こそ日本酒」「男は辛口」「辛口こそ通」「辛口と言っておけばいい酒が出てくる」と信じてやまないというのも、この特集を読むと理解できます。


これって、未だに60代以上の男性酒飲みが「越乃寒梅が・・・」とか「日本酒は新潟に限る」とか「米処にこそいい酒が」「大吟醸なんて料理の邪魔になる」とのたまって、昨今の事情を知ることがないまま酒飲み話を営々と続けている姿に似ています。飲食の風習は常に保守的なのであります。


さて、この特集が波紋をよんで波となるのか?大きな期待はしないで静かに見つめていきましょう。




こんな特集に興味をもつくらいの「あっ、私、言ってた”辛口ください”」と心に覚えのある方に、もうちょっと。


日本酒を注文する時に「辛口ください」を封印するのと同じように、そういう場面でちょっと下に見られないために封印ワード「フルーティ」「ワインみたい」という言葉もちょっと待って。ガールフレンドの前で尊敬のまなざしで見つめられたければ、「フルーティ」と言わずに「洋なしの香りが」「白桃の香りが」「青リンゴの香りが」(大体この三つで多くは収まります)と。これって言った者勝ちだったりするワードので、あくまで控えめにぼそっ。


さらに、「ワインみたい」という前に「ゲベルツのニュアンスが」「ムルソーのような膨らみが」なんて・・・店にすごいワインコレクションがないことを確認しつつ・・・言ってみたりするってのはどうでしょう。


尊敬されるかどうかは保証できませんが、煙に巻くことはできます。なんてね。