手書き〜熟成の期間


同じお酒のラベルですが、よく見ると二つの字はちょっとだけ違うのがわかると思います。朱の印鑑の位置も違いますよね。




つまりラベルは手書きってことです。


印刷するまでもなく手書きで済んでしまうほどの量しか生産されていないと言うことでもあります。


お酒は藤枝の志太泉の最上「純米大吟醸斗瓶取り原酒」


久しぶりに手に取った「泉」は高橋貞實さんが作っていた頃を彷彿とさせるほど素晴らしいお酒になっていました。


しかしながらお客様に提供する前に封切りして約二週間は経たほうがお酒は美味しくなっているような気がします。一週間ではまだまだ最初のアタックに粗さを感じてしまうのに、熟成が進むと喉ごしがするすると柔らかく変化してこのお酒の本来のポテンシャルが発揮されます。封切りせずに寝かせる場合ならちょっと高め(10度前後?)の温度帯で8ヶ月から一年の熟成が必要かも。まだ定石がない日本酒業界では一本づつやってみなければわかりません。



ワイン好きならばご存じのように、ロバート・パーカーの「ボルドー」にはすべてのシャトーのすべてのヴィンテージに「飲み頃:20○○年〜20○○年 最終試飲月日199○年○月」と書いてあります。パーカーさんはすべてのワインを若い状態で試飲して、そのワインの飲み頃を指摘しているんですね。日本酒も実はこの「飲み頃」を予想し、お酒がもつ本来のポテンシャルと飲むべき時期を予想することがとても大切です。多くのお酒は出荷された時が最上であると信じられてはいるのですが、私が思うのは「もっと美味しい時があるんじゃぁないか?」ということ。蔵元、杜氏さんが丹精こめたお酒のピークを探すのはまだまだ日本酒業界では未知の世界です。私たちに大事なのは、お酒の持つポテンシャルを正確に理解すること。今が「いまいち」でも半年後に「抜群」になっている可能性をどこまで見抜けるか。あらゆるお酒を扱うサービスマンにとって必須な要件なのです。


「同じ蔵元のお酒なのに弁いちで飲んだのはなんか違うかも・・・」と思って頂けたとしたら、それは私が考えたピークが正解だったのかもしれません。お客様一人一人にいちいち説明をするわけではありませんが、こんなことも考えながらお酒を提供しています。