おおかみこどもの雨と雪


すごいもの観ちゃったな。


映画「おおかみこどもの雨と雪」を観た、いや、観ている最中から「これは日本映画の金字塔になるかもしれない」と思っていました。


細田守監督は「時をかける少女」の時から、欠かさず聴くラジオ番組「ウィークエンド・シャッフル」の出演で、とても身近に感じていた監督でした。「サマーウォーズ」今回の「おおかみこどもの雨と雪」と決定的に上質な作品を重ねていくたびに、巨匠への階段を上り遠くに行ってしまう寂しささえ感じてしまっていたのです。



この映画はおおかみおとこと人間の出会いという最初のシチュエーションからファンタジーの要素に彩られているにもかかわらず、アニメならではの超越した設定が脚本の力と声優達の演技ですんなりと心に落ち着くのです。しかも設定に無理があろうがなかろうが、根底に流れているのは出会い 恋 結婚 出産 子育て 子供の旅立ちという世界中のすべての家族に共通する、そのうえすべての家族がそれぞれに形が違う物語なのです。


出会いのときめき、恋の喜び、結婚の幸せ、出産の不安、子育ての試行錯誤、生きていくための生活の試練、コミュニティー人間関係の複雑さ、煩雑さ、力強さ、子供社会の葛藤、子供達の目覚め、子供の親離れ。すべてはおおかみこどもを育てるという特殊な環境の中とはいえ、すべてはどの家族にも形が違っても存在する人生そのものです。しかしながら、おおかみこどもというファンタジー要素を加えた中で、13年間の家族の物語をこれほど流麗に描いた映画が日本にあったでしょうか?私は間違いなく希有な作品と断言します。


しかも、加えることにその映像表現は驚くべきです。


ファーストシーンの草花が風に揺れるシーンに始まり、雲は常にムクムクと立ち上り、流れ、星は空をゆっくり動き、雨は現実よりも厳しく降り、滝は流々と落ち。。。自然は常に映像の中で変化しているのです。時にざっくり描かれる人間個体のバックでは綿密な自然が流れている。映像的にもアニメーションはこの映画でエポックをむかえたのかもしれません。


さらに、声優としての宮崎あおいの圧倒的な存在感、幼少期 少年少女期を驚くべき才能で演じきった子供達。


これほど素晴らしい映画が、普段斜にかまえて批判ばかりしているTV界のバックアップでできあがったことがことのほか嬉しいのです。


すべての人々が映画館に足を運び、感動を味わっていただきたい映画です。