分母の違い


自分の使いたい食材を使い、やりたい料理をお出しする。志は高く持ってもその値段を地方都市で納得してもらえるか?


まさしくそこン処が大きな悩みです。


田舎町で理解してもらえないだけでなく、好き勝手に贅沢な食材を使ってもお足を頂戴できる客層がいなければ商売として成り立ちません。


たとえば、主要都市から車で1時間以上、住民の多くが年金頼りのお年寄りという場所があったとします。そこがどれだけ美しく美味しい野菜の産地であっても、その地で料理に二万円のレストランを開業するのは日本では無謀というモノです。




田舎町はこれだからだめなんだ。俺の料理はここでは受け入れられない。東京なら高い値段を払う客はいくらでもいる。


そういう悩みを持つ料理人は東京で勝負すればいいジャン、と私など思うのです。


東京と地方都市、単価の高い料理店が成り立つかどうかの大きな違いは分母の違いです。東京だけにお金持ちが集まっているわけでも、東京に住んでいる人間が民度が高いわけでも、東京だけの文化度が高いわけでもありません。人口が多いという分母の大きさが違うのです。


東京都だけも1300万人 東京都市圏では3500万人ともいわれる分母と、100万に満たない地方都市の分母では単価の高い料理を求める客層のボリュームは全く違います。


浜松にだって私の料理を求めてくださるお客様は一定数いてくださいますし、日本酒を深く理解しているお客様、ワインを愛して止まないお客様も間違いなく存在してます。東京にしかいないのではありません。そういう思いで店を形作り、表現できるキャパシティーを探り、自分自身のやりたい仕事との折り合いをつけながら店の大きさや客単価を算段してきました。


地方都市だから無理、地方都市だからだめ・・・なのではなくて、地方都市にはその寸法にあわせたやり方があるはずなのです。