名演その37〜ヴァーチュオーソのデュオ


1980年 ニューヨークでビル・エヴァンスの訃報を知り、メモリアル・サービスへ出かけました。


教会では様々なミュージシャンたちがエヴァンスの死を悼んで演奏を繰り広げました。私の隣にはジミー・コブが座っているというニューヨークを体で感じる体験の中、心に一番響いたのがジム・ホールのソロでありました。


翌日出かけたヴィレッジ・ヴァンガードの出演はたまたまジム・ホールトリオでした。


これまた、たまたま演奏の休憩時間にジム・ホールたちが私の隣の席にすわりました。自然に会話が始まり、「昨日のビル・エヴァンスのメモリアル・サービスでの演奏はとても印象的でした」と私。


「ああ、昨日来てたんですね。エヴァンス・・・残念でした」とジム・ホール。と、しばしの会話が続いたのでが、ジム・ホールという不世出のギター・ヴァーチュオーソは本当におごったところのない謙虚な普通のおじさんという印象で、そのギタープレーをそのまま人格に写したような誰からも尊敬されるとわかる人格者でした。


そんなジム・ホールが、ジャズ界の紳士、ベーシスト ロン・カーターとデュオでライブ録音したのが「アローン・トゥギャザー」です。


ふたりの穏やかな人間性がそのまま演奏に表れているようなリラックスしたスウィング感、難しいことをいとも軽々と弾きこなす名人芸、ギタリスト、ベーシストであればすべての曲をコピーして勉強したくなるような独創性とスピード感あふれるパフォーマンスが繰り広げられています。


私の記憶ではこの1972年の演奏以前に名演と伝えられるギター・ベースデュオは存在しませんでした。


記念碑的なこのアルバム、人々の心を癒す力を持ったヴァーチュオーソの出会いを記録した一枚は、すべての音楽ファンのコレクションの中にはいるべきです。




アローン・トゥゲザー

アローン・トゥゲザー