白酢和え


修業時代、煮方が白酢の味をつけながら、「この白酢ってヤツは難しい。こればっかりはオヤジ(調理長)には全然かなわない」ボソッと語ったことがありました。


味付けをするなんてまだまだ先の先であった追廻の私は「そうか、白酢、難しいのか」と頭の中に深く刻まれてしまいました。


あれから四半世紀、当時の煮方の年齢も調理長の年齢も遙かに超えた今でも、やっぱり白酢って難しいのです。


酢 塩 砂糖 味醂 薄口醤油・・・・味噌以外の基本調味料が全部入った上で、そのバランスを上品に仕上げなくては白酢になりません。いきなり目分量で適当に調味料を加えてしまうと、「あれ?酢が少したりないか?」  んで足してみると、「甘味もちょっと?」「塩味も?」と足せば足すほど全体のまとまりが悪くなってしまいます。できれば一回の味見で決めてしまうか、少なくとも二回目で決められなくては失格。あとはドツボにはまるだけです。


そういう繊細さが必要な白酢和え 今回は三河産のミル貝と大徳寺麩を和えてみました。



前菜に二口ほどが盛られるだけですので、気づかずに終わってしまうことも多いひっそりした料理ではあるのですが。