隠れた銘酒その3


宮城県石巻は震災の影響が甚大でした。


店でよく使う日高見さんは津波で蔵の冷蔵倉庫に浸水し、たくさんのお酒が駄目になりました。もうひとつお付き合いのある墨廼江さんは、地震の大きな被害を確認している時に津波に襲われて、全員が命からがらコンテナの上に逃げて助かったと聞きました。蔵はほぼ冠水状態であったとか。


震災後から二つの蔵の生き残った(震災前に出荷されていた)お酒をたくさん使ってきたのですが、今年の造りを頂戴するのは無理なのではないかと思っていたのです。


ところが墨廼江さんの最上の一本「別吟」が手に入りました。どうやらこの辺の最上級は別の場所で熟成されていたようです。


墨廼江 別吟



蔵元厳封とラベルにあるように蔵で何年か(たぶん三年くらい?)の熟成を経て集荷されるこの逸品は、まさに隠れた銘酒です。


冷温熟成のお手本のような完璧な熟成感。お酒がこなれるというのはこういう味なのであると静かに主張しているたたずまいが清廉です。


できれば、あまり世の中で注目されずに秘やかにファンだけが楽しみたいお酒です。