備忘録として



「ホームレス歌人のいた冬」三山喬
「まばたきとはばたき」鈴木康広
「風神帖」池澤夏樹
「困ってるひと」大野更紗
「ポーカー・フェース」沢木耕太郎
「おまえさん」宮部みゆき
ヒットラー水木しげる
「いつだって大変な時代」堀井憲一郎
「テレビは総理を殺したか」菊池正史
「昭和史の逆説」井上寿一


じたばたしたカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」を読み終え、押さえられていた蓋が取り除かれたようにさくさくと様々な趣向の本に向かえます。こういう経験も案外いいかも。


エッセイに触れるのは初めての(旅行記を除く)池澤夏樹さん「風神帖」に辻邦生さんとの関わりが書かれた一章がありました。その文章は辻さんの作家としての素晴らしさを称える文章にあふれています。20代から30代の一時期、辻さんの小説とエッセイにのめり込んだことがありました。辻さんの作家活動も脂がのっていた頃で、次々に現れる著作をむさぼるように読みふけっていました。が、あるとき、読書家として尊敬していた友人に「ええ!辻邦生なんて読んでるの」と一言いわれたことが。。。彼の真意がどういうものであったのか、問い詰めることはなかったものの、そのニュアンスに「大衆小説家」と見下したようなものを感じてしまい、辻邦生ファンを公言することをずっとためらっていました。あれから四半世紀、力がちょっとでも上と思われる方の言動にすぐに動かされてしまう私は、池澤さんの辻邦生評を知って、あっという間につまらない誤解をやっと解いたのでした。ちょっと前に「西行」を読み返してはいたのですが、さらに「夏の砦」「回廊にて」なんて書棚から引き出してみようか。