「ツリー オブ ライフ」「一枚のハガキ」


テレンス・マリック監督は私にとって「わけがわかんない」監督の一人です。


お得意様が以前、「”シン・レッド・ライン”素晴らしいよね」と当時公開された話題作のお話をしてくださったのですが、私にはやっぱりわけがわかんない映画でした。ストーリーはそれなりに理解できても表現法がすっきり腑に落ちない。ひたすら私の理解力のなさ故なのだと思うのですが、気持ちよく楽しい映画で育ってきた私にはハードルの高い監督なんでありました。


ツリー・オブ・ライフ」も残念ながら同様のフラストレーションがたまった映画でした。はっとするほど美しい映像の数々とそれを増幅させる音楽には驚嘆しつつ、ストーリーも理解しつつ、んでも、もやもやしたものだけがたまっていくのです。


純文学がそうしたそうしたもやもや、不安をかき立てる何かを表現することで成り立っている言われますが、その意味ではきわめて純文学的なのかも・・・んでも、私のような表現の奥底までを深く理解できない人間には解説がなければ無理。マリック監督は、自分の映画は映像そのものがすべてで、解説は必要ない・・・と一切のそういう取材を受けていないと聞きますので、それも無理なんでしょうね。


いや待てよ。この映画、観客のざわざわした心の不安をかき立てるところに意味があるとしたら大名作なのかも?


ずいぶん時を経て「2001年宇宙の旅」を町山智宏さんの解説でやっと理解したように、テレンス・マリック監督解説をどなたかよろしくお願いします。




新藤兼人監督作品「一枚のハガキ」


考えてみたら新藤監督作品って劇場では一回も見たことがなかったのです。


脚本家としてヒット作にたくさん関わり、監督としては信念を曲げることなく作りたい映画を作ることを貫き通して80年、尊敬以外なにものも存在し得ない日本映画界の巨匠です。この映画で語られることは、もしかすると若い方々にはすでに想像の範囲を超えた事実なのかもしれません。戦争の戦闘そのものではなくて、銃後の家族と、戦後の厳しい現実を残された世代に伝えるという意味でも大切な主題でしょう。


個人的には大物俳優たちの演劇的で少々ツーマッチな演技が辛いところもありつつも、しっかりと新藤節は心に響きました。