素の中にプロのスゴさが


地上波を好んで見る事はほぼありませんので、サントリーこの映像がTVで流されているのかどうかはよく知らないのですが、食傷気味なACのCM(であることくらいは地上波をあまりみなくてもしっているほど露出過多)よりはさすがにセンスのいい作りだなと感心しました。


とはいっても、ひねくれもの私は心の片隅で別のことを考えていました。


丁度この映像を見た時に届いたのが、注文しておいたアンネ・フォン・ソフィー・オッターとブラッド・メルドーの「ラブ・ソング」
というアルバムを聴き始めたときでした。


メゾ・ソプラノの世界的な歌い手と、ジャズ・ピアノの頂点をさらに上にとつき詰め続けているブラッド・メルドーとの競演。しかも、オッターは本職のメゾ・ソプラノ的な歌い方ではなく、素でつぶやくように、隣で語りかけるように歌っています。これがもうウットリするほど美しい。


こういうオッターは数年前のエルビス・コステロとの名盤”FOR THE STAR”
で実証済みでしたから、驚愕というほどではなかったのですが、それにしてもオッターのセンスのよさと歌い手をしての底力をまざまざと見せてくれる傑出したアルバムであると感じていたのです。


そこで、あの、サントリーの映像でした。



アーティストと呼ばせていただきたいミュージシャンというのは、出来上がったCDやTVやDVDで聴く造られた音以上に、素で見た時にその圧倒的な実力を知ることがよくあります。たとえば、リハーサル風景でリムショットを一発パンと打っただけでドラマーの実力に驚いたり、自宅の練習風景を見ただけでプロの凄さを知ったり、楽屋で発声練習をしているのを見て歌手の本領を思い知ったりするのです。


やっぱりプロって凄い・・・ってね。


アンネ・ソフィー・フォン・オッターの本業クラシックではないポップな歌声を聴いたときに、彼女の実力の奥深さと日々欠かさないであろう長い習練が垣間見えて、アーティストの力を知る一方で、日本では歌手、もしかすると本人的にはアーティストと自称する人達の素の歌声に打ちのめされるか?この人達は日々の習練重ね、音楽家として人々を音で感動させる能力をもっているのか?結局素人と紙一重で「芸能人」としてTVの上だけで人を喜ばせているだけなのか?サントリーの映像にみえる方々の歌声を聴きつつ考えてしまうのです。オッターの素とサントリー映像の素のあり方は別物ではあるのですが、本人の実力が無残にあわられていることは聴く人が聴けばわかってしまいます。


・・・・なぁぁんて、比べること自体どうかと思う、映像の本旨を考えればそういう発言自体不謹慎・・・といわれることを承知の上で、あくまでこころの片隅で考えていたのでした。


「こんな時」でも造られた感動ではなくて、本当の感動を大切にしたいな・・・と思いながら。