「ヒア・アフター」「ザ・タウン」


ファースト・シーン ギターの音 最初の二小節で「ああ、またイーストウッドにいい気持ちにしてもらえる」という予感で心が充たされました。


映画「ヒア・アフター」です。


最初の音による癒された瞬間に比べ、映像はバカンスを楽しむ南国の島であるにもかかわらず、少し暗めで粒子が粗く不安を感じさせます。ホテルロビーで何か起こるのか?遠景にみえた教会で?土産物売りの露店で?・・・直後、惨劇は、確かに数年前に実写で見たシーンの再現として現れました。


もうここで一気に映画の中に引きこまれます。あとは身を委ねるだけです。


委ねていても安心できるイーストウッド組が今回も回りを固めています。ティム・ムーア、トム・スターン、ジェイムス・ムラカミ、ジョエル・コックス、ゲイリー・ローチいつもの職人達に加え、スピルバーグが、キャサリーン・ケネディーが、フランク・マーシャルが、そして傑出した脚本を書いたピータ・モーガンが。裏方だけだってオールスターです。



物語は三つのストーリーが交互に重なるように現れます。それらはすべてが死後の世界に関わるのですが、ピーター・モーガンイーストウッドの素晴らしいのはそれら三つのストーリーが、たとえ単体で一つの映画になって構成しうるほど説得力をもって語られるのです。そして後半、三つのお話は一つに重なり幸福なエンディングへと導かれます。


確かに、日本で言えば江原某のように死後の世界を語っているにも関わらず、そういうことに胡散臭さを感じてしまう偏屈な私でさえ、素直に納得してしまうような穏やかさに満ちているのです。それらはきっとイーストウッドがこの映画について語る「死後の世界があるかどうか、真実は誰にもわからない。ただ、人は誰も与えられた人生を精一杯生きるべきだと、僕は常に信じている」というように、映画が生の素晴らしさを表現しているからにほかならないからです。



主演のマット・ディモンがずっと映画の王道を着実に歩んでいるのと同様に、盟友ベン・アフレックも常に活躍しているものとばかり思っていたのですが、どうやらアルマゲドンパール・ハーバー以降脚光を浴びるような活躍は多くはなかったのだそうです。考えてみたら2000年半ば以降思い出せる映画がありません。


が、監督主演「ザ・タウン」で復活したといっていいのでしょう。このまま、がんばっていただきたいなぁ。