仕入先の不思議


牛乳 生クリーム バターなどをもらっている乳製品屋さんがありました。和食のことですからもらう量も知れたものです。献立によってたまに分量が増えるくらいで、私ン処は大したお得意では全くありません。


この乳製品屋さん、必ず現金取引(なにしろ分量が少ないですから)であることは当然のこととして、頑なにお釣りを持ってきません。


代金が198円だとしても1984円だとしても、「お釣りある?」と聞くと、ごく冷静に・・・というか、冷たい口調で「ありません」と、こまかい小銭を(私の手元にたまたまなければ)ひっかきあつめるまでぼんやり待っているのです。
普通に考えてみれば、私ン処以外でも現金取引をしていて「お釣りなし」を強調していれば小銭を持っていても不思議ではないはずなのに、「小銭の持ち合わせはない」と言い張るのです。


日本のように顧客へのきめ細かなサービスが当然であるような国では、(もし私が逆の立場なら)「あの店にはお釣り用の小銭を用意していこう」くらい考えても不思議ではないと思うのですが、製品のみに絶対的な自信があるのか?ただ、営業マンの怠慢なのか?ボンクラなのか?(怠慢ボンクラというのはいいすぎでしょうか?)


さらに、毎日店の前を通っているのに、急に「明日も生クリームお願いね」と頼んでも、「こちらのお店への配達日は○曜日ですので無理です」と、これも言い張るのです。


こんなことで上司に電話して「お前ン処はどうなんてっんだ!」と言葉を荒げるのもばかばかしいものですから、心の中でため息をついて「んじゃ、いいや」と諦めました。


取引先としては、開店以来90年間支払いが滞ったことは一度もないですし(父も祖父もそれを信条にしていました) ある取引先など「親方ン処はこの地で一番無理を言わないいい店です」といったほど、無理な要求はしませんし、一度取引を始めると長いお付き合いをさせていただくことが多い店でもあるのですが、こんな些細な事で「あああ、この店、お付き合い無理かもな」と思ってしまう、気弱で心の狭い料理人なんであります。


一般的に考えれば、この厳しい経済状況では百円でも続けて取引をしてもらえる店があれば、顧客の満足度を高める努力を怠らないのが普通だと思うんですけどねぇ。お釣りを用意しない何か深遠な理由があるのだろうか??はて。