コツがわからない


先日、朝の奥様むけ番組で「玉ねぎみじん切り 涙が出ないように切るコツは、包丁を押して切るのではなくて、引いて切ること」と。


玉ねぎの切れた微細断面写真も表れて、そのコツがいかに論理的であるかの裏づけも説明されます。


観ていた私は「へぇぇぇ。。。そうなんだぁ。。。」と職業人としてはお粗末にも思わず納得したりするわけですが、実際玉ねぎをみじん切りにするときには、別に包丁を引いてきるようなこともありません。普通に切れば涙はでないのですから。といって「コツは?」と問われると「切れる包丁を使うこと」くらいしか頭に浮かびません。要は毎日ちゃんと砥いだ包丁で、むかぁぁし先輩から教わった手順で普通に切れば涙は出ないのです。むしろ涙が出るように切れ・・・といわれたら困ってしまう(いわれないけど)


長嶋茂雄監督が、「ピッチャーが投げた球をこうやってパッァァーンと打てば当る」と言ったとか言わないとか(野球ファンでないので定かではありません)


長嶋さんほどの名人と比べるのは全くおこがましいのですが、一応この道のプロと名乗る職人は玉ねぎのみじん切りのコツを考えたこともないはずです。若い頃教わったことを何百回 何千個も繰り返しているうちに身についた作業で、ここをこうして、あそこをああして・・・などという手順を考えるわけでも特別なコツの伝授があるわけでもないのです。


同じように、先日桜海老かき揚げをお惣菜のお蕎麦にのせたら、スタッフの女性が「どうやったらこういう風にカラッと揚がるんですか?コツは?」と聞かれて、ハタと困りました。


油を170-180度にして、衣はこのくらいで、揚げ鍋を傾けて手前を浅くして、シャモジにこんな風に乗せて、揚げるだけ。


・・・ということも、聞かれたから思い返しただけで、体は自動的に動いていて、上手く揚げるための段取りさえ考えないのが当たり前です。この中のどれがコツだろう?教えて欲しいくらいです。もしかしたら、自然に体が動いている中でどれか別のコツらしきものがあるのかも?


どなたか料理研究家さんがそばで作業を見ていて、「あっ!それコツです」と素人目線で見たときにコツが発生するんでしょうね。


少なくとも私にはたくさんのコツや名人ワザや、一子相伝で秘儀は120%ありません。すべての板前が同様に身につけた作業手順を普通に身につけているだけしかないのですね。