回転寿司
「ちょっと小腹がすいたねぇ」
「お昼どうしよっかぁ」
「朝が遅かったから食べなくてもいいんだけどぉ」
と連れ合いと車でしゃべりつつ、買い物に出かける途中でありました。
外食をするときの店選びは夫婦にとってとても大切で、一軒でもはずしたくない、と思うと、普段の休日ですと外に出る前に予約の電話をいれるか、「今日はこちらの方面だからこの店」と決めてから車に乗ります。
たまたま今日は朝ごはんが遅かったものですから、昼は抜いて、早めの晩御飯でもいいかぁ。。。くらいに思っていたのです。
たまたま目にとまったのが、とある回転寿司屋さん。スタッフの一人から「回転寿司の中では○○は案外いいらしいですよ」と小耳にはさんでいた店でした。さすがに午後も二時近くなるのに駐車場はほぼ満車。人気です。
これまで一度だけ東京近辺で回転寿司屋さんに入ったことがあったのですが、「まっ、もう入らなくてもいいかぁ」と、それ以来一度も足を踏み入れたことのない領域でした。握るという特殊な技術を除けば、素材や料理方法は自分の厨房でやったほうが安上がりで、どう考えても回転寿司屋さんよりは美味しいものができる自信はあるので、あえて出かける必要もなかったのです。商売柄の役得です。
魔が差したといっては失礼ですが、小腹を満たすためには丁度いいかもと一台あいた駐車スペースに車を止めて、店に入りました。
入り口で「二名です」と告げると、
「14番のテーブルへどうぞぉ」と若い女性スタッフが、よくぞここまで小さく・・・と感心するほどコンパクトな紙おしぼりと14と書かれたカードを渡されました。
おしぼりを持ってテーブルへっていうのがすでに異空間。
14番テーブルに着くと、そこにはお湯が出てきそうなボタン、生姜甘酢漬け、わさび、お茶の粉、醤油、甘だれ、箸が並べられています。さらに小さな表示板にネタの写真が映し出され、タッチパネルで注文ができるみたいな感じ。
「うーーむ、これは回転寿司の流儀を学ばないと正しい注文ができないらしいぞ」
初めてみるシステムに戸惑う夫婦、まるで銀行のATMのまでもたもたする老人のようです。
しかしながら、そこはそれ、ちゃんと? ? ?と手順がわかりやすく書かれています。
お茶は抹茶に似たものをカップ「えーーーと、カップはどこに???」に二杯入れてお湯のボタンをカップごと押す・・・と。
醤油は「えーーーと、醤油小皿はどこだぁぁ??」をいれて・・・と、山葵は寿司にはついていないらしい。
食べ終わった皿は・・・と、この小さな窓に入れるとカウントされるらしい。でも醤油の小皿はきっと入れちゃぁいけないんだろうな。
流れてくる皿のお寿司の別にタッチパネルで注文すると、注文の品が流れてくるらしい・・・・でも、どれがその注文の品か判別するんだろう??・・・と思ったら、流れる皿は二段になっていて、注文品は高速で注文テーブルのまん前で止まった!んでも注文は三皿以上いっぺんにしてはいけないって書いてあるぞぉ。注文品がやってくる流れのところに「ここを押してください」って緑のボタンがあるけど、何のために押すんだろう??怖くて押せない。
むかぁぁし入った回転寿司は皿の色で値段が違ったけど、この店は皆同じ皿、どう違うんだろう?
へぇぇぇ、お汁やうどん、さらにペンネまであるけど、それも回転してやってくるんだろうか?
もう雑誌の特集でよくある「すし屋さんでの流儀」寿司屋のカウンターに座ったらこう振舞え!というマナー特集を半笑で眺めていた私を戒めなくてはいけません。「回転寿司の流儀」勉強してから出なければゆっくり楽しめないのではないか?と思うほど、回転寿司の使い方は別世界であったのです。
しかし、この設備投資のノウハウがこの形態の店の大繁盛と売上増大の決め手でもあるわけです。侮れません。
さて
一般的なお味のほうはというと、値段を考えたら優れてよくできています。食に詳しいお得意様が「回転寿司に入ったら、かんぴょうとかっぱ、鉄火で攻めろ」とおっしゃったように、巻物と稲荷寿司は秀逸(ちょっといいすぎかも)でありました。果敢にもマヨネーズコーンとか、半熟玉子マヨネーズ葱のせってのにも挑戦して惨敗しつつも、結構面白かった人生二度目の回転寿司でありました。
食後、口の中がどうもぺっとりしているのをさっぱりすべく、すぐ隣の巨大家具屋さんに併設されたカフェでシフォンケーキセットを注文しました。お洒落な空間、一見見栄えのよい椅子なのに、「家具屋カフェにこんなすわり心地の悪い椅子でいいのだろうか」という椅子で、出てきたシフォンケーキはもちろん出来合い、せめてもの生クリームはしょぼい量しかついてない上に、コーヒーはシャビシャビ。
で、
値段は回転寿司と全く同じひとり650円。
値段の価値がわからなくなってきた休日でした。