昔はこうではなかった


このサイトで再三いっているのですが、今の価値基準で過去の事実を語ったり、良し悪しを判断することはきわめて危険です。だからこそ、私も含め過去を肌で知っている人間は、「あのときの時代の空気はこうだった」と繰り返し言うべきなのだと思うのです。


小林信彦さんはそのコラムの中で同じことをよく書かれています。


先日文庫になって読んだ「昭和が遠くなって」の一節


TVドラマで、もうひとつ、明らかに<おかしい>と思うのは、戦争中に反戦的な庶民が存在することである。父親も母親も戦争を憎んでおり、主人公のぼくもそうだったという設定。近所の小母さんも、大声で<反戦>を口にしたりする。
日本では、時代の風を感じて、<先んじて動くの>のは大衆であり、そそのかすのはマスコミである。半藤一利氏の「昭和史」に、真先に戦争を支持したのが毎日新聞だと、はっきり書いてある。そうなると、ほかの新聞もナダレ状態で、戦争支持にまわる。
戦争中にも、反軍的な人はいたが、沈黙を守り、それでも投獄された。大きな声で<反軍・反戦>を叫ぶ<庶民>なんていなかった。

と。


「そそのかすのはマスコミ」であった時代よりも、さらに「売れるためには何でもやる」「視聴率のためならなんでもあり」のマスメディアの時代になり、マスメディアのいうことから一歩離れて・・・よりもマスメディアの言うことは一切信用しない・・・というのが歴史から学ぶ大切なことかも。




このところ映画館の予告で必ず出てくる、サイパン島で戦った日本軍人の美談勇猛を取り上げているらしい映画のキャプションには「民間人を守った」という言葉が盛り込まれています。私なんぞ、その一言でこの映画を観る意欲がなくなってしまいます。さらには「生きて帰る」という言葉も、戦争の時代に将官クラスの軍人に「民間人を守る」とか「生きて帰る」という発想があると思うこと自体信じられません。今の感覚で戦争を語ってるのでは?予告だから、「感動の」ストーリーだから、観客を集めるためだから事実を捻じ曲げているのか?それとも本編はきわめて真っ当で、私の誤解なのか?確かめるために観にいくほど暇ではありませんが。