日本酒の歴史


私の店で扱ってきた日本酒をふりかえると、吟醸酒を中心に日本酒が発展してきた歴史とともにあったような気がします。


お酒を飲める年齢になった昭和50年代初頭、日本酒の世界ではナショナル・ブランドといわれる大手メーカーの時代から地酒のブームが起こり、吟醸酒の時代へと変遷していきました。そんな時代の変遷とともに店置くお酒が変化していったのですが、いざ20年前、30年前の日本酒を取り巻く時代を思い返そうとしても簡単には記憶は呼び出せません。


そんな時役に立つのはnetの情報よりも手元にある古い雑誌やmook本です。




写真にある「日本酒の研究」は昭和57年の雑誌、この雑誌を眺めるだけでその当時どんなお酒がもてはやされていて、時代はどんな風であったのかが見えます。この時代の匂いが伝わってきて頭の中によみがえるのです。


もう一つはお付き合いのある酒屋さんで頂戴した「甲州屋光久物語」 地酒発掘の先達であった故児玉光久さんを描いた漫画なのですが、ここには昭和40-60年代の日本酒をめぐる時代が鮮やかに描かれています。さらに時代変遷の細かい資料も書かれていて、忘れてしまっていた記憶、知らなかった情報が満載です。


こういった資料とともに日本酒が歩んできた歴史を認識しておくことは私にとってとても大切なことで、今の時代だけを切り取って安易な批判をする前に、実体験とともに時代の流れを知っているとより正しい判断ができると思うのです。肌で知っている時代を語ること、それは私達のような年寄りの務めでもあります。