扉が開くとき


お得意様のお連れでお越しになったのは、気鋭の若手経営者お二人。


このお得意様は若手に私ン処のような店の使い方を伝授することがとてもお上手です。


「焼酎?日本酒?ワイン?何にする? 好きなものだけ大将に伝えて後は任せれば大丈夫」
「じゃぁ、辛口の日本酒を。。。」
「この店で甘口辛口なんていわなくてOK。きっと面白いものが出てくるから」



大切なお得意様に任せられればいっそう気合が入ります。



辛口・・・とおっしゃるお客様の突破口を頭に思い描きます。


最初はとっつきやすい開運波瀬正吉斗瓶生純米大吟・・・とはいっても蔵に残っていた最後の波瀬、私達から見れば歴史遺産とも言うべきお酒。続いて、宗玄大吟醸斗瓶生・・・波瀬さんの後継者坂口幸夫さんの最上一本。


この二本で「おお、日本酒が甘い辛いの二分割ではくくれないとおっしゃるのがよくわかります」というお言葉がいただけました。


そして十四代 龍月


「甘さとふくよかさ、ふくらみ、味わいの豊かさって表裏一体なんですね」と。店のコテコテの定番ながら、すでに三杯のお酒で多くを語らなくても店のポリシーを味わいで理解していただける懐の深さと、舌の柔軟さをお持ちでいらっしゃることがわかって一安心です。


そしてデザートと一緒に、達磨正宗熟成用仕込み新酒タンクNO.46生 平成16年


「これはもう日本酒の範疇ではとらえきれないですねぇ。甘みがこんなに美味しいとは・・・」


たぶん、この四種類だけで裏を返してくれそうな感じ・・・というのも、幹事役のお得意様の水の向け方が上手だから・・・なんですね。ありがたや、お得意様。