石頭の偏屈


備忘録もかねて映画館で観た映画は一通りこの日記に書き連ねてきましたが、この三ヶ月くらいの間に見た映画は書き始めると批判的になってしまいそうで書くことをためらっていました。観て来たのは「告白」「インセプションズ」「ソルト」「キャタピラー


でも別格だったのは「トイ・ストーリー3」でした。


ピクサーアニメを劇場で観たのは、「レミーのおいしいレストラン」以来、まだ二作目。たまたま観る機会がなかったのではなくて、あえて避けていたのでした。


第一作の「トイ・ストーリー」の予告を観ただけなのに、「手書きが最上であるべきアニメにCGなんて」「アニメはリアルに近づけば近づくほど素晴らしいのにこのキャラクターののっぺりした実在感のなさといったら・・・」と、今考えたら年寄りの偏見に満ちたゴタクなのに、一度信じたらてこでも動かない偏屈さで、ピクサーを軽視し続けていたのです。それは「モンスターズ インク」「ファインディング・ニモ」でも変らず、半笑でピクサーを眺める態度は続いていました。


契機は「Mr.インクレディブル」 映画だけでなく文学、音楽にも造詣が深いお得意様が「なかなか素晴らしいよ、観にいったら」と進めてくださったときでした。「この方がいうなら・・・」と頭の片隅で思いつつも、やっぱり映画館に脚は向かないという最悪のピクサー軽視野郎。まったくどうしようもありません。


で、
レミーのおいしいレストラン」は業界話のことでもあって、この映画がピクサーであることも知らずにお気楽に出かけているのです。ですから、ものすごくいい映画であると認めていてもそれがピクサーだから素晴らしい・・・とは気づいていないお粗末さでした。


実際にピクサー映画であることを認識しつつ、ピクサーへの偏見がぐらりと変化したのが「ウォーリー」でした。こいつはとんでもないものを見失っていたんだぁ。。。と激しく後悔し、食い入るように映像に見入りました。とはいってもこれもDVDのレンタルで観ているのです。さらに「カールじいさんの空飛ぶ家」(原題は”Up”なのね。このほうがいいのに)は劇場で見逃し、初代「トイ・ストリー」から15年目にしてやっと深く悔い改め、大きな反省を胸に秘めて「トイ・ストーリー3」を観にいってきました。


いやぁぁぁ、本当に素晴らしい。


映画の基本はアニメであろうと実写であろうと脚本です。これほどよく練られた脚本があって、アニメーションならではの緻密な描写があって、なにより人生の深い感動を様々なシチュエーションで表す巧みなストーリーテリングがあります。この映画のラストで涙が自然に出てくるのは、ポンニチ映画お得意のお涙頂戴の涙とは180度違います。物語のあまりの素晴らしさゆえに眼鏡をかけて3Dで観ていたことさえ忘れていました。


これほど志の高いクリエーター達の作品群を軽視し、半笑で「子供のもの」くらいにしか思っていなかった私は最悪の大ばか者でした。


ジョン・ラセター率いるピクサーは、これらもきっと一切妥協のない歴史に残るアニメーションを造り続けていくのでしょう。今からでも遅くはない。懺悔して追いかけていこう。