素材を尽くす


三河湾の釣りモノ赤むつ。




表面の輝きと身の肥え方だけで上質であることは見て取れるのですが、鱗をひき、水洗いして、包丁を入れた瞬間に「こりゃぁなかなかのシロモン」というのが刃先を通じて感じられます。


三枚におろし、昆布〆に。お客様にお出しする直前に皮目を炙ると、脂がジュワジュワと。


召し上がっていただいたお客様も一口で「おっ!」と。


理解できる方に上質な魚の最上の部分を召し上がっていただけた嬉しさです。




20-30代の頃、憧れの店店にうかがって感じてきたのは、和洋中を問わずに素晴らしい仕事はすべて素晴らしい食材に発していたことです。それらの店では、陳腐な食材を技術でカバーするという仕事は100%ありませんでした。憧れの職人さん達は食材に妥協してはいらっしゃいませんでした。


ならば、彼らに近づくための第一歩は食材であったのです。


こういう赤むつを使うことができる店であり続けること、それが店のモチベーションを維持するための第一条件です。