ん・・・っ、もうぉぉぉぉ!


古典落語をやると、”ん・・・っ、もうぉぉぉぉ!”っていってはしょって短くしちゃうんですよぉ」


春風亭昇太さんの古典落語を評したのは盟友ともいえる立川志の輔さんでした。


座布団から飛び上がり、高座で寝っころがる昇太さんの映像の一部だけを見たことがある私には「さもありなん」と、破天荒な彼の落語を想像していました。


といっても、落語会のチケットが取れない・・・という噂からは、「TVに出ているから、破天荒だから、だけで売っている落語家さんではない、なにかうったえかけるものがあるのだろうな」という想像も容易にできました。


店の工事のおかげで、めったにいけない落語会に先日出かけることができました。春風亭昇太さんです。


演目は「花見の仇討ち」「花粉寿司」「天狗裁き


初めて聴く昇太さんは「新作の昇太」ではなくて、二つの古典の間に新作を挟むパワフルな高座でした。


「花見の仇討ち」は予想以上に端正な正統派の古典に仕上げられています。彼にかかると実際座布団の上で飛んだり跳ねたりしてもそれに違和感がありません。


「花粉寿司」は先日CDで聞いたばかり。くしゃみを「ダッショーーン」と表現したところにこの演目成功の鍵があるように思ったのですが、目の前で見る「花粉寿司」は「やっぱり落語は生に限る」をそのまま体現していました。


最高潮は「天狗裁き」 なんというリズム感。落語全体にラップのようなリズム感を感じる見事な高座。笑うだけでなく心が躍るパフォーマンスに時代を創る昇太さんの落語の真骨頂を見ました。


もちろん「ん・・・っ、もうぉぉぉぉ!」なんて微塵もなし。きめ細かく計算された三つの演目の間には古典と新作の垣根を感じることは全くなく、まさに「昇太落語」でしかくくれない気品がありました。名人の資質が昇太さんにはキラキラ輝いて見えます。