「千ひろ」さん初


京都へ長谷川等伯を観にいくのと同じくらい大切なのが食べること。


初めて「千ひろ」さんにお伺いしました。


「千花」時代に2-3回いただいているのですが、「千ひろ」さんを開店されてからなかなか機会に恵まれませんでした。とはいってもメディア注目度も高い永田さんのお仕事は開店当初よりずっと見つめ続けていました。



いただいたのは

先付け アスパラとさっと炙った帆立 黄身酢
前菜  蛍烏賊叩き 空豆 琵琶湖鮎子のあっさり焚いたもの 味噌漬けにした鯛の糸造り 鯛肝ゼラ寄
お造り 淡路鯛そぎ造り 甲烏賊 本鮪炙り叩き長芋を添えて 南京けん
お椀  ホンダ鰈 新筍(西の京近辺)わかめ 焼蓬麩 木の芽
焼き物 若狭甘鯛酒塩焼 焼葱
鉢   濃厚な豆腐 生湯葉かけ 菜の花
揚げ物 小海老と山菜のかき揚げ 塩を添えて
中皿  鯛中落ち(腹剥き身)酒蒸しポン酢かけ
強肴  焼き茄子 生姜醤油
ご飯  うすいご飯 しらす釜揚げとちりめん山椒のせ 赤だし
デザートフレッシュジュース


写真を撮ることはもちろん、メモを取ることさえ集中力をそぐようではばかれます(でもたぶん間違ってはいないはず)


同じ材料を与えられ「さあ、やってみなさい」といわれたら決してできない仕事ではないのに、親子二代 兄弟ともにぶれずに培っている料理群は、私が自分の店でやったらただの物笑いになるでしょう。世界中で「千花」さん「千ひろ」さんでしか提供できない素材と料理なのです。


一職人としてこの料理を食べると、知らないうちにまとわりついた手垢を洗い流してくれるような感覚に陥ります。「千花」さん「千ひろ」さんを訪れることは私にとっては禊のようなものなのです。


親を否定することで成り立とうとして私なんぞに比べて、「千花」さん「千ひろ」さんは唯一無二であったお父様を兄弟ともに正当に継承し発展させている比類なき料理人たちです。うなだれてひたすら尊敬します。