料亭と料理屋


料亭と料理屋はどう違うのでしょうか?


「弁いち」は料亭か料理屋か?


ぼんやりとしていてわかりづらいですよね。


普通に考えると値段が高いか安いか?お庭があるかどうか?カウンターではなくてお座敷で料理を提供するかどうか?床の間のあるお座敷かどうか?女将が着物でサービスしてくれるかどうか?なんてところがイメージにわきやすいですが、現実には明確な線引きがあるわけではありません。


素人が自腹でいけないくらいの日本料理店を料亭と呼ぶ・・・・と考えてしまえばことは簡単ですが、実際にはもうちょっと昔をふり返ったほうがいいかもしれません。


今では料亭も料理屋も純粋に料理を中心にそれにまとわるサービスや器、お飾りなども含めて楽しむ場所ですが、昭和30-40年代くらいまでは日本料理店は料理を楽しむためだけの場所ではありませんでした。お座敷のあるその地で格式のある料理店では、宴席を持つときには必ずといっていいほど芸者衆をよび、料理があってお酒とお酌があって女性がいて商談があり接待があるのが当たり前で、料理店はそういう社交の場所でした。料理店が料理とお酒だけを楽しむグルメチックな場所となったのはそれほど昔のことではないのです。社交としての接待がごく当たり前に社会の潤滑油であったとき、それに使われるのが料亭でした。そういう料亭はお庭や池があること、お座敷と床の間、季節のお飾りがあることはその頃の感覚ではごく当たり前のことでした。


私が子どもの頃、お座敷から三味線の音が聞こえない日はありませんでしたし、宴会はにぎやかなものでなければなりませんでした。お料理とお酒だけを静かに楽しむという今の感覚では当時の雰囲気はなかなか想像しづらいかも知れませんね。


私ン処は昔から料亭と呼べるような格式は全くありませんでしたが、その当時は女将が着物を着ているのは当たり前で、床の間にお軸があることも、芸者衆が毎晩はいることも、杯洗があってお酌のやり取りがあることもごく普通のことでした。その頃の宴席を頭に浮かべると料亭の認識もすとんと腑に落ちるのですね。