欄間と掘りごたつ


欄間(らんま)といっても若い方はご存じないかもしれません。日本の座敷には欄間は美的になくてはならに存在でした。もともと部屋と部屋とを完全に区切って密室空間を作ろうという感覚がなかったのですね。襖や障子で部屋を区切るということ自体その現れです。


店を新築した15年前、部屋の扉は襖が当たり前でしたし、欄間を作ってもいいか(つまり隣の部屋の声が聞こえても問題ないってことです)とさえ思うほど、感覚的にはお座敷を密室空間にしなくてはならないというつもりがありませんでした。むかしの料理屋のお座敷なんてそういうものでした。


ましてや掘りごたつ形式なんて居酒屋さんの定番で、料理屋に取り入れてしまうと格式が落ちるとさえ思っていました。たった15年前でそんな風だったのです。


ところが時代は驚くほど変りました。15年前にはなかった「隠れ家風○○」があっという間に増え、料理屋も掘りごたつでなければ使えない、隣の声がちょっとでも聞こえたら接待など絶対無理・・・という風に変ってきました。欄間の美しさなど考えもしないようになったのです。



一般家庭に畳がなくなり、若者だけでなくお年寄りも正座や胡坐をかくことがなくなって、掘りごたつはなくてはならない料理屋の定番になりました。今回のリニューアルではすべてのお部屋を掘りごたつもしくは椅子を使うようにします。20年後には掘りごたつこそ伝統的な日本のお座敷・・・ってことになっちゃうんでしょうかね。