身奇麗にスリムに


献立をみただけで「あっ!この人天才かも」と思わせる数少ない料理人の一人ピエール・ガニェールが、一度閉店した東京の店を復活させるのだそうです。


この記事:http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100317/1031252/


最初の日本進出の時にはメディアも巻き込んで大きくTVの番組などでも取り上げられ、「ガニェールが来る」だけでなくて、それを呼び込んだ運営会社のオーナーも脚光を浴びました。天才料理人と辣腕経営者という私達からしてみたら雲の上の人たちの華やかな行状を指をくわえてみていたものの、結局は運営会社が破綻してあっという間に閉店。今回は少なくとも料理業界の運営会社と手を組むということで再び「三ツ星か・・・」と注目を集めているのだそうです。


ひがみ根性たっぷりでお話させていただけば、こういうグローバルなタックが長期間にわたって成功し、文化として根付くのはとても難しいものです。規模はもう笑っちゃうくらい小さくても、お話をいただいて父や私も自店以外お店と協力関係を結んだことが何度かありましたが、そのストレスたるや大変なものです。お互いの目指すところの違いが次第に開き始め埋められない溝が必ず出てくるものなのです。ただ、料理店を企業として考え始めると必ずどんな店も通る道でもあって、成功させる性根を持っている経営者は規模を広げられるのですが、根が職人な私なんぞには結局無理なお話です。


支店展開だけでなく、他店とのコラボレーションやプロデュース、TV出演、料理本の出版から学校経営まで、料理人が手を広げる範囲は昔に比べたら驚くほど拡大しています。


もともとそういう気のきいた軽やかな身のこなしとは対極にある私ができるのは、Last Workとして一職人にもどることです。料理を一から十まで自分でこなして、掃除や野菜の下準備といった若い頃励んだ仕事も元に立ち返って全部自分でやること、汗水たらして地を這うようにどっぷり調理場で仕事をすることです。それがなにより楽しいことがよくわかるからです。


ガニェールやロブション、デュカスたちのような天才にはなれない職人は、調理場に帰ってお客様ひとりひとりに対することに幸せを見つけたいのですね。少なくとも弁いちにくれば私の料理が出てくるってのが大切なのです。