インビクタス


週末に映画「インビクタス」を観てきました。


一ヶ月ほど前にDVDで「名もなき看守」を観ていましたので続いてのマンデラ関連作品です。


両方の映画共にネルソン・マンデラという稀有な存在がいかに人間的に偉大であったかを描いている映画です。歴史上の人物の偉大さを脚色したものよりも、ほんの何年か前に目の前で見てきた人物だけによりいっそうマンデラの人間としての寛大さ豊かさが心にしみます。


さてところでクリント・イーストウッドの「インビクタス」です。


確かにこの手の勝利モノが陥りやすい、事実の凄みに負けてしまう映画の薄っぺらさはさすがになくて、手堅い脚本と演出で上手にまとめているのですが、私達映画ファンはどうしても監督としてのイーストウッドにこれ以上のものを求めてしまうのです。


振り返ってみればイーストウッドは監督としてもすでに30作品を世の中に出している超売れっ子、多作と言ってもいい監督です。初期の「恐怖のメロディー」や「アウトロー」「ハートブレイク・リッジ」などの娯楽作品しか見ていなかった頃には、監督としても押さえどころを抑えてちゃんと売れる映画を作れる人・・・くらいの認識であったのに、「許されざる者」でオスカーを取って以降、さらには「ミステック・リバー」から後は作る作品作る作品一つとしてはずれなし、歴史に残るといっていい作品ばかりを打ち出してきたのです。「ミリオンダラー・ベイビー」「硫黄島二作品」「チェインジリング」「グラン・トリノ」どれをとっても代表作と読んで差し支えないものばかり・・・もうすでに神がかり的です。


日本人が黒澤作品に期待するように、デイビット・リーン作品にはずれなどないと思い込んでしまうように、今のイーストウッドなら死ぬまで駄作は作らないと思ってしまうのですね。


いえ、決して駄作ではないし、普通の監督が作ったら「なかなか良い作品」くらいに思うのに、イーストウッドとしては・・・よくいえば肩の力を抜いた、軽くジャブを打ったような作品になっているのです。決して後世に語り継がれる作品ではないかもしれないのですが、まっ、イーストウッドですからぁ。。。よしとしましょ。