名乗り方


近頃物忘れがとみにひどくて、「若年性アルツハイマー?」と疑いたくなるような体たらくです。


ですから、外で挨拶をされたりするとき、顔ではニコニコしながら「えーーーと、誰だっけぇ???」と思い悩むこともひんぱんです。


そういうことが度々あると、逆にお得意様に外、普段着で出会った時には必ず「弁いちです。先日は・・・」とこちらから名乗ることを忘れないようにしています。白衣以外の姿を見慣れないお得意様には「私」とわかるのに時間がかかることもよく分かっていますしね。得意様に「誰だっけ?」と悩まさせるようでは料理屋失格です。「先方は私のことなんて覚えてない」というのを前提にしなくてはならないのです。


最悪なのは「いやぁぁ久し振り、わかる?私」って言われるとき。


お客様なら、即思い出せなければ失礼にあたるし、単なる友人の繋がりなら妙な敬語もヘンテコだし。客商売としてはどうやって対処したらいいのか悩ましいったらありません。


また電話などでも「佐藤です」「田中です」「鈴木です」なんていう注文が入ると、何人もいるお得意様の佐藤さん、田中さん、鈴木さんのうちの誰なのか、石ころ程度の頭をフル回転しなければ思い出せないのです。声だけですからなおさらなんですね。


この場合も逆のケースで、私が電話をする時には必ず、「○○町(もしくは○○市)の弁いち ○○です」と必ず場所柄と店の名前をいれることを忘れないようにしています。


ここでも電話で「○○だけど、久しぶり、わかる?」ってのは客商売をする人間にとっては最悪です。


普段からお客様だけでたくさんの方々とお会いしているのですから、「久しぶり・・・わかる?」の95%は「わかんない」「覚えてない」「30分考えさせて」に違いないのです。


老人ボケの板前には愛の手をお忘れなく。