ワインラバーの極み


私が初めてワインに出会ったのは1970年代のこと。尊敬するワインラバーのあるお客様は、それよりも遙か前から仕事で在住していたフランスでワインに触れておられました。休日になるとパリを起点にする循環バスに乗り、フランス中の田舎を巡ったのだそうです。そんな中で出会ったワイン、美味しさに目覚めてからこれまで50年にわたって銘酒を飲んでこられました。


日本人にとって「ワイン=赤玉」の時代、グランバンもDERCも知らないことはもちろん、ボルドーブルゴーニュの違いさえわからなかった時代から極上を舌で認識していたのです。今をときめくソムリエたちがミルクを飲んでいたころのことです。


そんな方のワイン話が面白くないはずはありません。聞くお話聞くお話「へーーー!」「そうなんですかぁ」の連続です。しかもお話に自慢めいた響きが全くありません。むしろ淡々とごく当たり前のようにマニア垂涎の逸話が続きます。極みを知る方はそうしたものなんですね。


さらにこの方の「お茶事話」も素晴らしい。ベネチアで自作したワインクラーを水差しに、ワイン樽を使った茶台に、ロマネ・コンティの葡萄木を使った茶杓・・・利休さんのころのお茶の独創性というのはこんな自由な発想から生まれたんでしょうね。


お話をお伺いしているとこのお席から離れられなくなって困ります。