戦争を語る


神足祐司さんは広島の出身。ラジオで聴いていると、「母も叔父も被爆体験なんていままで一度も話したことはなかった。この前親戚が集まった時に初めて聞いたくらいなんですよ」と話していました。


八月十五日が近づくと戦争体験番組が一層増えます。この二年くらいNHKBSでは定期的に戦争体験者の証言を番組にしていますが、そこで話すご老人達は総じて「やっと今話す」と言っています。


亡くなった私の父も満州で敗戦直前に召集され、ソ連戦で危うく死にかけました。病院に運ばれ生死の境をさまよい、決死の覚悟で脱走して命からがら帰国しましたが、あのまま病院にいたら間違いなくシベリア送りであったはずです。


そんな話を直接父から聞いたことはたった二回か三回、小説の一本、連続ドラマでもできそうな戦争の話を好んで話すことはありませんでした。


今となってはもっときっちり聞いておくべきであったと後悔することしきりです。


体験者から悲惨な話を直接聞くことは戦争の大きな抑止力となります。ブッシュはイラン帰還兵の病院を訪れた後、飛行機の中で隠れて涙していたという事実を密着取材していたカメラマンが話していました。「自分が始めた戦争」の犠牲者を目の当たりに見て初めて悔いる。「大国アメリカの指導がそんなんでいいのか!」と大きな声で言いたいくらいです。


私たち市井の人間はもちろんのことですが、各国の指導者こそが戦争体験者の話を直接聞き、ヒロシマアウシュビッツを就任後必ず訪れて何が起こっていたかを知ることこそが、早まった決断を下す前の心のストップボタンになるはずです。


「どんな理由があっても戦争はいけない」一生かたく思い続ける人が一人でも増えなければいけないと思うのです。