八丁味噌

clementia2009-08-04



味噌汁のための味噌は冬には米味噌系の白味噌、夏には豆味噌系の八丁味噌を使っています。


写真の八丁味噌に出会ったのが5年ほど前、お得意様に教えていただいて以来夏の間の定番です。


一般家庭で使う八丁味噌の多くはすでにブレンドされ漉されている味噌ですので、写真のように豆の姿は残っていません。本来の八丁味噌は蒸した大豆に麹菌をつけて玉状にして熟成させますので使う前に漉さなくてはいけません。昔は使う分をすり鉢に入れて豆状の粒をすりつぶさなくてはならなかったのです。私が今使うのは便利なスピードカッター、汗をかきかきすり鉢をこねまわすころに比べたらずっと楽ちんです。


吉兆創始者湯木貞一氏が晩年に「八丁味噌は難しい。今だに格闘しています」とおっしゃっていました。あの湯木さんに「難しい」と言わしめた八丁味噌なのです。味噌のレベルが高いことはもちろんですが、出汁が大事です。鰹節の香りも大切な上に、もっと大切なのは八丁味噌の渋みに対応できるコク。店では椀物の一番出汁をとったすぐ後の鰹節と昆布にいりこを加えて少々寝かせ、お造りで使った鯛や鱧の頭や骨を白焼きにしたものを入れて煮だします。鰹節、昆布、いりこ、魚の骨のコクと複雑さが八丁味噌独特の渋みを活かしてくれるような気がするのです。


きっと湯木さんの求めた奥深さはもっと違うところにあるんでしょうねぇ。あと何年したら見えてくるんでしょ、私。