ご飯の推移と傾向


長谷製陶(現長谷園)さんの「かまどさん」を使ってお客さまごとに土鍋ご飯を炊くようになったのは、「かまどさん」発売間もない確か10年ほど前。その当時お付き合いのあった新潟の酒屋さんに紹介していただいて使い始めました。当時、「料理屋に5個10個と買っている奇特なやつが・・・」と長谷社長夫妻がお揃いでご来店してくださったことがありました。


その後、店独自のご飯炊専用土鍋信楽の中村文夫さんに作っていただいたのが2003年のことでした。


15年前ですと、超高級料亭ではお客様単位の土鍋ご飯が出てきても普通の日本料理店ではまだまだ一般的ではありませんでした。


さらに20年前までさかのぼれば、店では父も元気で「料理屋の〆のご飯はお茶漬に決まってる」と十年一日のごとく毎回お決まりのお茶漬をお出ししていたのです。当時のお酒をしこたま飲む宴会のことを考えるとそれも一理あったのだと思います。なにしろ周りでは言われなければご飯類は出さない料理店もたくさんありました。料理屋はお酒を飲むところでご飯を食べるところではなかったのですね。


最近の京都に目を向けると新店舗を立ち上げる若い方々の90%が土鍋ご飯をお出ししているような印象を受けます。ご飯ひとつとっても伝統的・・・と変わらないことが正しいと思われがちな日本料理で、たった5年-10年で大きな変化が見られます。変化のスピードはますます速くなり、舌の感度とアンテナを多方向に向けていないとあっという間に手あかのついた店になってしまいます。目新しさではなく、正しく美味しいものを見極める力を磨いている料理人だけが生き残っていけるんでしょうね。10年後・・・大丈夫でしょうか?私。