言われて思い出した献立


いつもあふれるように創作した料理が頭に浮かべば仕事をしていても楽しいことこの上ないのでしょうが、貧弱な発想しかできない私はいつも乾いた雑巾を絞るようにして献立を考えます。


一つの食材に対して何個の料理を思い浮かべることができるか。思い浮かぶだけなら長い経験がありますからそれなりに数はあげられますが、それがお客様にお出しできる水準であるかどうか・・・となると消去しなければならない献立の方が多くなってしまいます。つまり頭に浮かんでは消えていく料理の方が多いのが現実なのです。それほど美味しい料理、傑出した献立、後世まで語り継がれるひと皿というのはたくさんはありません。


ですから、同じ季節に店にお越しになられると、「あっ、この料理三年前に出たかも・・・」ということがあっても不思議でもなんでもありません。「これはいけるかも」と思えば毎年お出しする定番だっていくつもあります。私の定番ですから決して後世に残るわけではないのですが(と、言い訳もしておいて)



今は豆が美味しい季節。そら豆、グリーンピース、うすい豆はこの時期必ず献立にのぼります。今シーズンは久しぶりに豆ごはんにしてみようかと思い、炊き上げた京都のうすい豆の豆ごはんを定番の塩味の代わりに細切りにした塩昆布を乗せてみたのです。


昨日お越しいただいたお得意様に早速召し上がっていただくと、「豆ごはん久しぶりだね。いつだったか食べさせてもらった豆ごはんにベーコンが入ったやつも美味しかったよね」


あっ!そうだった。以前の豆ごはんにはお豆と同じような大きさに切ったベーコンを炊き込んでいたことをすっかり忘れていました。そうそう、結構評判も良かったんでした。お客様に言われて思い出すなんて、なんとお恥ずかしい。まっ、それだけ前を向いて進んでいるのだ・・・と自分を慰めておきましょう。