日本人的おまかせ


ソムリエの田崎信哉さんのお話だったと記憶しているのですが、初めてデートで使うレストランでのコツ。


若い方が行きつけない高級フレンチレストランを決め技のデートに使うとき、席に着いた直後にトイレに行くふりをしてソムリエさんもしくはメートルをこっそり呼びます。そこでソムリエさんに「今日が大切なデートであること」「予算は○○くらいしかないこと」を告げ、何事もなかったかのように彼女の待つ席に戻ります。本来なら電話予約の時点でその旨を伝えておけばいいのですが、直接言うっていうことも大切ですね。


告げられたソムリエさんは間違いなくデートが成功するようにさりげなくサポートし、予算の中に収まる様なワインだけを奨めてくれるはずです。そしてそのワインをいかにも高級であるかのようにプレゼンしてくれるかもしれません。


「まかせる」極意がここにあります。



アメリカ人のように、ステーキの焼き加減はどうする?付け合わせは何にする?その付け合わせの料理方法は何にする?サラダのドレッシングは何にする?


全部を自分で決めさせられる文化が日本人になじむのかどうか?日本料理の場合、私の分野では「おまかせ」が大変重要です。料理はコースの値段帯と好き嫌いだけをおっしゃっていただいて後はおまかせ。店では多くの場合、お酒も予算だけお伺いしておいておまかせ。そのほうがよりプロフェッショナルな提案をさせていただけるのです。お得意様は「あいつにまかせておけば安心」と思ってくださっているように見えます。小さな店ですから、お得意様の細かいデータの蓄積をきちんとした上で、お好みにあわせ、時には冒険もして楽しんでいただける努力をおしまないつもりです。すべてのことはお客様一人一人でみな違うのです。そこが小規模な店の醍醐味です。


緊張のデート? わざわざ告げてくださらなくても小さな日本料理屋は察します。そういう機微を日本人は大切してきたのですね。