言い訳


「言い訳をしない」というのはプロフェッショナルの大切な要件です。


恥ずかしながら若い頃は言い訳三昧の日々でした。きっかけはほんのちょっとした友人達との会話でした。何人かと食事をしていたとき、ある店の話題になって「○○(料理店)のご主人ってねぇ、言い訳が多いんだよねぇ」


今考えれば「言い訳をしない」ことは当たり前なのですが、人の言葉でグサリと心に刻まれることというのは確かにあるのですね。




「昨日の鯛は素晴らしかったんですがねぇ。今日は漁がよくなくて」
「風邪気味で体調がよくないもんですから」
「この値段設定じゃぁねぇ俺の実力は発揮できません(心の中で)」
「客がこのレベルじゃぁいい器は買っても意味がない」
「人手がないので料理がおそくなっちゃいます」
「田舎町だから濃い味でなければ受けない(本来の俺はこうではない)」
「今日の出来は最高ではない」


以上は直接ではないにしろ、こんなニュアンスのお話を実際に私が聞いたことです。


昨日の品物のほうが優れていてもお客様は嬉しくありません。体調の管理はプロの基本的な要件です。いただけるお足の中で最上のレベルを発揮するのがプロです。安い値段に満足していないなら自分が満足できる環境を作り上げることもプロの仕事です。客のレベルと云々する輩は自分のレベルを高める努力をしていないものです。自分のお客様の資質を侮ることはプロとしてあってはならないことです。毎日が最高のレベルを保つことは至難の業ですが、お客様にとっては今日のその日が唯一であることを忘れていはいけません。


うーーーん、人生訓みたいでちょっと恥ずかしいですが、言い訳をしたからといってお客様が「まっ、そういう理由ならしょうがないかぁ」と納得することが100%ありません。最上の仕事ができていなかったとしても「どうです。今日の私は」と常に胸を張っている姿を崩さないこともプロとしては大切なのことなのです。