人生の先輩の戒め


「お前はなってない」「何一つわかってない。勉強しなおして来い」「人生、そんな甘いもんじゃない」


そんな言葉を厳しく投げつけられた経験のある方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。若い時分には特にそうです。


私なんぞ、いい歳になるまでそういった教訓、戒めのシャワーの連続でした。今くらいの年代になってやっとそういう言葉を浴びせられなくなったことがなにより楽チンです。これほど居心地のいい年齢は未だかつてありません。


そういう年代になって振り返ってみると、人生の先輩として私に戒めの言葉を投げかけてきた連中は、そう大したモンではなかったということがよくわかります。人のことを非難できるほどの人生の達人であったとはとても思えない輩であることがほとんどでした。道を究めていなかったし、人生を語るほどの徳もありませんでした。今だからこそ思えることなのですが。


そういう人々が私のいい反面教師になっています。人に人生を語れるほど人々それぞれの人生は単一ではなく多種多様であること。価値観を人に押し付けることほど乱暴な所業はないということ。人の有り様は知れば知るほど奥深くて言葉少なにならざるをえないこと。


人生を語ることなど、三流雑誌の芸能人インタビューに任せておけばいいのです。どんなに若い者でも、人の道に外れずに真面目に生きている人々に対しては、長く生きたというだけで教訓めいたことをたれるのは恥ずかしいことです。人々のそれぞれの歩みに触れれば触れるほど人に対して謙虚にならざるを得ないことを実感できるようになっただけで、齢はとってみるもんだと思えるのであります。 うーーん、そういう言葉自体教訓めいているかもしれませんねぇ。お恥ずかしい。