地産地消ではおぼつかない

clementia2008-04-10



以前に「地産地消だけを標榜していては使うべき食材は手に入らない」というようなことを書いたことがあります。


今旬を迎えた新筍は、まさに地産地消では無理です。一般的に考えれば、「地元の採れたての朝掘り筍を朝のうちに下茹ですれば美味しくないわけがない」「鮮度こそが筍の命だ」「採れたてであれば刺身でも食べられる」と思われがちです。確かに言葉は美しく響き、野菜も鮮度である・・・という考え方は利にかなっているかのように見えます。


しかしながら、「採れたてだからえぐみがない」わけではないのです。


実際、地元では有名な筍が採れる場所で朝掘った筍を、45分後に茹でてもえぐみは強かったのです。


筍もほかの野菜、魚と同様に産地です。「どこで採れた筍か、誰が栽培した筍か、どういう風に育てたか」で決まるのです。



店で使っているのは京都洛西 乙訓の筍だけです。よく言われる白子筍というやつ。今のところこれ以外の筍は考えられません。


乙訓の筍は手のかけ方がまるで違います。冬の間に「敷わら」「置土」(客土)(わらを竹畑に敷き詰めそのうえにほんわり土をかぶせます) 収穫期には親竹が選定され、収穫末期には芯止めといって上に伸びた竹も切りそろえられて風通し日当たりをよくします。 夏の終わりには古い竹が切り落とされ・・・と一年中手入れが行われた竹林には雑草はもちろん、一般的にイメージされるうっそうとした竹など存在しなくてすっきり必要な竹だけが並んだ風景が見られます。


ここで育てられた筍は柔らかく、えぐみは露ほども感じない筍になるのです。


以前にご実家が長岡京の筍農家という方がお越しになったとき「あまりに手間がかかるので後継者に苦労しています」というお話をお伺いしました。


自然に竹林に「育った筍」と、手間隙をかけて「育てた筍」では味が違って当然なのです。