こだわりへのツッコミ処


よくあることなのですが、TVグルメ番組で放送される「こだわりのお店」、時にツッコミ処満載だったりします(時にというか地方局の場合よく・・・かも)


現れたのはイタリアンレストラン。パスタ、ボロネーゼの紹介です。厨房もそこそこ綺麗に整い、フライパンも鍋もイタリアンの職人さんが使うそれ。


「おお、この店いいかも」と思っていると、「トマトを時間をかけて煮込みドミグラスソースを加えて・・・」


ええ!ドミグラスソース?ボロネーズソースにぃ?


「茹で上がったパスタをフライパンで炒め」


ええ!フライパンで炒めるぅ?


「パスタの上にソースをタップリと」


ええ!かけちゃうのぉ?


ミートソースの缶詰の写真に載っているようなパスタがレポーターの前に。


レポーターさん「ソースにコクがあって美味しいぃぃ」



「日本のスパゲッティ・ミートソースが長い間、炒めた白いパスタにミートソースがかけてあるものであったのは、あの缶詰の写真のおかげである」というお話を聞いたことがあるのですが、今、イタリアンを標榜するレストランで、ボロネーゼやラグーソースを頼んでそういうソースをかけちゃったパスタが出てくることはあまりありません。


凄いもの見ちゃったなぁ・・・という感慨とともに、ちょっと待てよ・・・と、ふと思い返したのであります。


そんな小生意気にイタリアンを語っちゃう私は、ホンノ20数年前まで、スパゲッティ・ミートソースは白パスタソースかけであると信じて疑っていなかったのです。自分で和えながら食べるもんだと。もうちょっとさかのぼれば、アルデンテなんていう言葉を聞いたことでさえ、伊丹十三のエッセイを学生時代(多分高校生か大学生)のころが初めて。30年前には探し回って手に入れたEXバージンオイル(品質は劣悪であったのでしょう)で作ったアーリオ・オーリオを作って「こんなものがなんで美味しいのか?」と疑問に思っていたくらいなのです。


これって、一昨日まで書き続けた日本酒の歴史と同じかもしれません。大きな顔で批判的に語ってしまう私のイタリアン歴など知れたもので、最悪なのはヨーロッパにさえ渡っていないという事実。日本のイタリアンの急激な成長は驚くべきで、日本酒の発展と同じくらい素晴らしいものです。お店の「こだわり」が今の私の視点で笑っちゃっても、過去の自分を振りかえれば背筋に冷や汗が流れることを忘れはいけないのでしょうね。