思いがけないメッケモン


フランス ブルゴーニュ ボーヌ・ロマネ村にあるドメーニュ・アンヌ・グロにぞっこんである、ということは折に触れて語ってきました。


実は似たような名前のドメーニュがもう一つヴォーヌ・ロマネ村にはあります。ドメーニュ・アンヌ・フランソワーズ・グロ。私の最愛のアンヌの従兄弟にあたる女性の造るワインです。


さらにややこしいのはアンヌ・グロもお父さんはフランソワ。お父さんの代にはドメーニュ・フランソワ・グロという名前でワインを造っていて、その後にドメーニュ・アンヌ・エ・フランソワ・グロとも名乗っていたのです。


アンヌ・グロ、アンヌ・フランソワーズ・グロ、フランソワ・グロ、アンヌ・エ・フランソワ・グロ


何がなんだかわかんなくなってしまいますよね。


どちらにしても二つの(今の名前では)アンヌ・グロとアンヌ・フランソワーズ・グロは元をただせば、ルイ・グロというおじいちゃんにたどり着くわけで、ルイ・グロの息子がジャン・グロとフランソワ・グロ(さらにギュスターヴとコレット) ジャンの息子がミッシェルとベルナールに娘のアンヌ・フランソワーズ、フランソワの娘がアンヌという具合で、ルイ・グロが育ててきたワイン畑が今では4つの偉大なグロ家によって分割されているのです。


ジャン・グロの息子のミシェルとベルナールは常に高品質なワインを造り、フランソワの後を継いだアンヌも私の最愛のワインを造っているのですが、ジャンの娘フランソワはパラン家に嫁いでアンヌ・フランソワ・パランとなりました。それでもジャンから受けついた偉大なリッシュブールやエシェゾー、ヴォーヌ・ロマネは嫁いだパランの名前ではなく、グロの名前でワインを造っているのです。


以前にあるワイン屋さんから「アンヌ・グロがたくさん入るからどう?」と連絡をいただいたことがありました。アンヌのワインはただでさえ稀少で入荷量が極端に少ないものですから飛びつくように「ください。たくさんください」の二つ返事であったのです。ところが届いたのはアンヌ・フランソワ・グロ。従兄弟のワインであったのです。本来なら「アンヌ・グロが入る」ではなくて「アンヌ・フランソワーズ・グロが入る」のはずなのですが、私が聴き間違えたのか、先方が言い間違えたのか、それないりにいいお付き合いを続けてきた店でしたので、文句も言わずに4ケースほどのワインを買ってしまいました。案の定開けてみたA.C.ブルゴーニュは、アンヌ・グロのそれとは比べものにならないシロモンで、「ああ、仕方ない」と料理酒として使っていました。


ところが先日長く寝かせておいたクラスがはるかに上の畑、エシェゾーを開けてみると、これが素晴らしいではありませんか。やっぱり、ルイ→ジャンと続いた特級畑は伊達ではありませんでした。これならリッシュブルーは間違いなくいいワインになるはずですし、ヴォーヌ・ロマネ、クロ・ブジョのワインたちにも希望が見えてきました。数年前目の前が真っ暗だった先の見えないワインは、素性が正しいだけに立派に育ってくれていたのです。諦めていただけにちょっと嬉しい。