正しい評価


夏休みの時期だというのにこの地にはちっともいい映画がかからず、映画館に行くことがありません。昨日は映画館にいけなかったイライラを解消すべく座席がいいことだけ(プレミア・スクリ−ン通常料金)を頼りにマイケル・ムーア「シッコ」へ。まっ、内容はいつものムーア節全開ゆえに片目をつぶった信憑性を意識しつつ観ました。


それよりも興味深く観たのがDVDで借りてきた「上海の伯爵夫人」


名監督ジェームス・アイボリー作品、しかも「日の名残」のカズオ・イシグロ脚本・・・・なのに、映画の存在自体を知りませんでした。


時代は1930年代の上海。戦争前の上海の知ったのは金子光晴「どくろ杯」を読んでからでした。あまりにも魅力的なこの本で描かれる上海の租界は、混沌と猥雑が入り混じった妖しげな雰囲気に満ちていました。今世界中を見渡しても同じ空気を見つけることは出来ません。映画でもこの時代の上海を映画いた映像は「太陽の帝国」「レイダース」くらいしか思い出すことができません。


DVDのパッケージには主演のレイフ・ファインズナターシャ・リチャードソンに負けないくらいの大きさで真田広之が描かれています。「きっとこれは日本向けのパッケージで出演はバットマンの時の渡辺謙くらいなんだろうなぁ」と思いつつもジェームス・アイボリー作品なら話題を聞かなくても是非見たいものだと手に取ったのでした。


ところが、この映画での真田広之は準主役くらいに大切な役どころなのです。存在感も素晴らしい。しかもあの「眺めのいい部屋」「モーリス」「ハワーズ・エンド」「日の名残」のジェーム・アイボリー作品なのにKEN・WATANABEのようにメディアで大騒ぎをされないのはなぜなんでしょう?


いつまでのメディアに注目される高橋尚子と、アテネ五輪ラソンで金をとっても見向きされない野口みずきの落差くらい不思議。




映画館で楽しめない腹いせのレンタルDVDは、8月に入ってからでも「善き人のためのソナタ」「ミス・リトル・サンシャイン」「幸せの力」「ファンシーダンス」と当たりが多くて幸せ。