名演その23〜ジャコ・パストリアスその2

clementia2007-08-25



自分の好きな分野、音楽や料理の世界で「天才」という言葉は安易に口にしたくはありません。メディアが「天才」と騒ぎ立てる人材の多くは「若いわりに上手」という程度が多くて、「んじゃ、その天才って言った彼(彼女)は20年後にも人々の心に残っているの?」と私が問えば99%の天才は「そういえば昔そんなのが・・・」程度なものです。


先日話題にしたジャコ・パストリアスは、そういう意味でもまさに天才でありました。


紹介したウェザーリポートでの活躍で天才の片鱗を感じていながら、本当のことを言うとこのアルバム「ワード・オブ・マウス」でジャコの天才を確信したのでした。


レコード(この時代はまだLPです)に針を落とした瞬間に背筋がゾゾゾと緊張が走るような経験はそう何度もあるものではありません。ジャコの16ビートを4ビートのようにものすごいスピードで刻み続けるベースに、ヴァーチュオーゾ達がソロをかぶせていく疾走感と張り詰めたスペクタクル。体が固まって動けませんでした。楽器を上手に弾くテクニックだけの「似非天才」ではなくて音楽をクリエイトし、グループをまとめる高い能力。これまで誰も考えなかった音楽を新たに創っていく創造性。こういうのを天才というのです。


そして彼の音楽は四半世紀たった今でも影響力を持ち語り継がれています。若い時、みんなより上手で天才と言われ、数年後にはメディアに相手にされなくなる人材とは決定的に違うのです(もちろん本人のせいではなくて騒ぎ立てるメディアに非があります)



この後、ジャコの音楽はまさかと思ったベーシストがリーダーを務めるフルバンドへと移行し、天才ゆえの精神の破綻から非業の死を遂げてしまうのです。


ジャコの名を後世に残すアルバムが1500円って! CDで持っていなかった私は即購入しました。