名演その22〜ジャコ・パストリアスその1

clementia2007-08-22



若い頃エレキ・ベースという楽器をバカにしていました。


特に私がジャズ・ベースに熱中していた時代には、エレキ・ベースはまだロック・ロール・ミュージックのための楽器で、フレットも付いて音程も取りやすく、早いパッセージも弾き易い。なにより同じパーターンを繰返すだけの単調なリズム楽器に比べるとジャズのウッド・ベースのほうがずっと格上である・・・と思い込んでいたのでした。フュージョンなどという言葉はまだ存在しない時代のことです。


そこに登場したのがジャコ・パストリアス。初リーダーアルバムの「ジャコ・パストリアスの肖像」で楽曲「ドナ・リー」を聞けば99%のベース弾きがぶったまげたものです。とはいえ、それでも石頭の私は「早弾きが出来るだけじゃん」と半分たかをくくっていたのでした。


ところがその後ジャコがウェザーリポートに参加し演奏を繰り広げると、それまでのエレクトリック・ベースの概念を次々とぶち壊す革新的な手法と驚異的なテクニック、意表をつくリズム構築で、あっという間に「エレキ・ベース格下」の私の石頭は木っ端微塵に砕け散りました。天才の誕生です。


この時代のウェザーリポートの東京公演を続けて二回聴いた時の興奮は、今思い出しても胸がドキドキするほど強烈なものでした。上半身裸でステージを走り回り、飛び上がって想像をはるかに超えた演奏を繰り広げるジャコに私の目は釘付けでした。「こんなのありえない」見たことも聴いたこともないパフォーマンスがそこに存在したのです。




写真の「ヘヴィー・ウェザー」はジャコの演奏タイルの最初の頂点を記すアルバムです。天才の出現を目の前で見た三十年前のこのアルバムは、今聴いても色あせることがありません。