唯一無二

clementia2007-08-13



「自分が美しいとまだ気づいていない女性ほど美しいものはない」といいます。


「綺麗だ綺麗だ」とちやほやされて気取り始め傲慢になっては楚々とした美しさはなくなってしまうのです。


昨日伺ってきた「達磨正宗」さんは、どれほど偉大な取り組みを続けているのかをまだご自身が認識していないのではないか?・・・と思うほど謙虚で美しい。間違いなく世界中で唯一無二の蔵です。


日本酒を寝かせるというだけの蔵はすでに日本中にたくさんあります。どの温度で何年寝かせればどういう味になるか・・・は、それぞれの蔵がそれぞれに試行錯誤を繰返していますが、毎年酸度やアミノ酸度、糖度を変えた酒質のお酒を造り、それらを適正な時間熟成させてさらにブレンドして古酒としての新たな魅力を探っているような蔵はどこにもありません。複数年度の古酒をブレンドするという発想は少なくとも日本にはありませんし、シャンパンのブレンドを思い返してもそれは味わいを整えるためのブレンドであってアグレッシブな新しい味わいを求めるためのブレンドではありません。


初めて蔵に伺った6〜7年前、昭和47年から時系列で古酒を味わったこと自体に感激し舞い上がっていた私であったのですが、それから古酒の様々な形に出会い経験を増やして、今回初めて店専用のブレンドを造っていただくために伺って、様々な年の様々な取り組みをした古酒を味あわせていただくと、自分自身の古酒の認識が昨日のテイスティングで飛躍的に伸びたことが自覚できます。


例えば、酸度5〜7という新酒ではすっぱくて飲めないようなお酒も4年の熟成経ると熟成香と酸度がマッチングして飲むに耐えるお酒に変化していたり、貴醸酒の甘味の熟成がどういう変化をしていくかが理解できたり、さらにはブレンドの技術を目の当たりにし味わいの違いを経験するとことで達磨正宗の偉大な試みの片鱗を知ることが出来たり、それはもう頭ではなんとなく理解していたことが目の前で繰り広げらているスペクタクルに感動してしまいます。


それらのことを理解して達磨正宗の古酒を味わえば、ひたすら頭を垂れひれ伏してお酒を頂戴するばかりです。


写真に並んでいる古酒たちは昭和54年から平成15年くらいまでのバラエティに富んだ熟成のお酒。今回は食中酒よりは食後酒をイメージして、穏やかにやさしく口に広がるお酒を目指していくつかのブレンドを試みていただく他ではありえない経験をしました。


今一念発起して達磨正宗と同じ試みをしようという蔵が現れたとしても、結果が見えるはおそらく20-30年後。それまでは独壇場であるはずです。偉大な蔵な偉大な試みを今評価できないでどうする!