名演その20〜哀愁のマイルス

clementia2007-05-26



名演シリーズにマイルス・デイビスがたくさんでてくるのは、マイルスを神様とあがめる私には仕方のないことと諦めてください。しかしながら、本当にマイルスには誰もが認める名演がたくさんあるのです。


今回取り上げるのは1959年録音”スケッチ・オブ・スペイン”


音の魔術師と言われたアレンジャー・コンポーザー、ギル・エヴァンスがスペインの盲目の作曲家ドロリーゴの作品をアレンジし、マイスルがソロをとった超名盤です。クラシックのギター協奏曲として有名なこの曲が様々なジャンルでアレンジされて人々の耳にお馴染みとなったのは、このアルバムの名演がきっかけであったといって間違いないでしょう。


当時のジャズの主流はハードバップ。泥臭い黒人の情熱を表現する熱い音楽であったジャズは、1950年代半ばのマイルスのクールで哀愁漂うバラードで新しいスタイルが確立されつつありました。今現在も「大人のジャズ」「夜のバラード」でイメージされるカッコイイバラードで演奏されるジャズはこの時代のマイルスが創りあげたのです。そんな静かでクールな音楽はこの「スケッチ・オブ・スペイン」で新たな展開を見せました。今でこそ、ジャズとロック、ジャズとボサノバ、スペイン音楽とジャズが融合しても驚きとは思いませんが、半世紀前にはおそらく衝撃的な音であったはずです。


私が始めてこのアルバムを聴いたのは中学生当時。最初の16小節で虜になりました。ブラスバンドでトランペットを吹いていた私にもメロディーラインだけならなんとかたどれるマイルスのソロは、今で言えばカラオケに熱中する若者みたいなもので、熱に浮かされたようにマイルスのまねをしていました。十代半ばの少年には「スケッチ・オブ・スペイン」のマイルスはかっこよすぎるほどかっこいい憧れの存在になったのです。


録音時から50年。今聴いても全く色あせることのないこの演奏、もしまだ聴いたことのない音楽ファンがいたら大きな悔いが残るはず、自信をもって「今すぐにアマゾンサイトをクリックしろ」といいたい(・・・なぁんて言ってしまってもいいのかぁ?・・・いやいいはず)