名演その19〜おしゃれ

clementia2007-05-14



1977年 スティーリー・ダンの名声を歴史的なものにした”Aja”が発売された当時、私はバリバリのジャズっ子でありました。ジャズとクラシック以外の音楽のほとんどを低俗なものと思い込んでしまっていたのは、私の意固地な性格だけでなく時代性もあったような気がします。あの頃のジャズファンには少なからずそういう傾向があったのです。1960-70年代の時代の空気がそうさせていたのかもしれません。


スティーリー・ダンの存在はもちろん知っていても、「アダルト・オリエンテッド」「都会的」「おしゃれ」などというレッテルを見ただけで、カッコイイ私を演出するための音楽なんぞ聞きたくもない。そんなものは音楽をファッションの一部と考えるようなアートの本質をしらない輩が聴く音楽だ・・・と頭から決めてかかっていたのです。まったくヤナ奴です。


そんなガチガチ硬派のジャズファンがたまたま耳にしたこのアルバムにぶっ飛びました。アダルト・オリエンテッド・ロックとはいえ、メンバーはスティーブ・ガット ラリー・カールトン チャック・レイニー ジョー・サンプル トム・スコット ウェイン・ショーター 大好きなジャズメンがズラズラとサイドを固めています。特に二曲目”Aja”の後半、ドラムス、スティーブ・ガットのフィル・インにウェイン・ショーターのテナー・サックスがかぶってくるところなど背筋がぞくぞくするほどスリリングです。このアルバムのココの部分だけを繰り返し聴くだけで満足してしまうほどグルーブしています。


「そうだ、やっぱりジャズメンはすごいぞ」「ジャズメンがサイドにいるからこそこのアルバムがなりたっているのだ」と感激しながらもやっぱりジャズサイドからしか音楽を聴いていなかったのがお恥ずかしい事実なのですが、聴けば聴くほどドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのアルバム造りの完成度に惚れていったのです。このあたりから音楽に垣根を作って聴いてしまうことの無意味さを実感するようになってきました。


考えてみたらあれからすでに30年。時代の空気とともにスティーリー・ダンを知っている世代は40代半ば以上になってしまいました。とはいえ、今聴いてもまったく色あせることのない”Aja” 未聴の方にはもれなくお奨めです。