いいものめーーーっけ


何度も書いていますが、ワイン好きは値段にとても厳しいです。「シャトー○○1996」の市場価格がいくらで、net上の相場がどれほどのものか。ソムリエ以上に目を光らせ、「あのレストランのワインリストは高すぎる」とか「○○のシャンパーニュはお買い得だ」とか。日本酒好きにはあまり見られない傾向です。


とはいえ、日本料理店を訪れる多くのお客様は、ワインリストの値段にはそれほど興味がありませんので、私ン処のリストの絶対価格をみて、ただ「たかぁぁい」と絶句される方のほうが遥かに多いのが事実です。


確かに日本酒もワインも値ごろ感だけを基準に選んでいるわけではありませんので、リストに載っているお酒の価値など興味のない方には他の店の値段との比較で「やたらに値段の高い店」と映っても不思議ではありません。


そんな中、何百人に一人くらいの割合でワインリストを見て「えーーー!こんなに安くていいの」とお酒の価値と価格の比較ができる方がいます。それでも「ルイ・ロデレール¥8500」「オーパス・ワン1996 ¥36000」辺りを見て安いとおっしゃる方がほとんどで、「ピリニー・モンラッシェ ピュセル 1995 ルフレーブ ¥20000」とか 「シャトー・ボン・パスチュール1997 ¥12000」を安い(レストラン価格として)とわかる方はかなりの少数派です。


そんな中、前回のワインリスト更新の際にひっそりと「シャトー・ヴァランドロー1995」をリストアップしてあったことに気づいたお客様は半年の間皆無でした。値段は¥35000。一般的な感覚では「赤ワイン一本に¥35000なんて考えられない」と思われるでしょうが、実はこのヴァランドローは年間2500本前後しか造られない超稀少ワイン、しかも1995が手に入ったとしても市場価格で¥100000を下回ることはないというワインなのです。レストランのワインリストに載れば最低でも¥150000はしても不思議ではないはずです。


このヴァランドロー、ほぼ10年前、あるワイン屋さんのセラーに一本だけおいてあったものを買っておいたものです。私自身「えっ!ヴァランドローがこの値段!!」と驚いたのですが、ご主人に「この値段でいいんですか?」と聞いてしまうと「あっ、間違え間違え」と言われてはいけないと、姑息にも他のワインと一緒に四の五の言わずに一本だけを入手しておいたのでした。


先日、この超安値のヴァランドローの存在に気づいたのは十年来のお得意様ただ一人でした。「親方ホントにこの値段間違いじゃぁないのぉ」と。さすがにこの方のワイン好きは半端ではありません。開けていただいたシャトー・ヴァランドロー1995は質が悪くて値段が安かったわけではないことは抜栓したと同時にすぐに分かるほどの圧倒的なブーケ、素晴らしいワインでした。


このお得意様に飲んでいただけたのならヴァランドローも本望です。




同じヴァランドロー1996もセラーに寝かされているのですが、こちらは全く真っ当な値段(?)で、リストに載れば軽く10万円を超えてしまいます。が、多分相対価格としては安いはず。どなたが買ってくださるんでしょうねぇ。