一瞬の風になれ

佐藤多佳子「一瞬の風になれ」読了




「ベストセラーに良書なし」などと言う方もいるそうですが、この本が良書であろうがなかろうが「むちゃくちゃ面白い」ことには異論を挟む方は少数派でしょう。1〜3巻まで時間を忘れて読み進んでいることに気づきます。特に3巻なんぞ物語が終って欲しくないと思うほど。悪くすればステレオタイプの青春小説になってしまいそうなストーリー展開が、作者の綿密な取材と躍動感あふれる筆致で読み手が批評家的であることを拒みます。100m走 400mリレーを何本か走るだけで一冊を書き上げ読者を魅了する佐藤さんの作家としての力は圧倒的です。この本だけで陸上競技が10倍楽しく見られること必至。輝く青春・・・などというカッコイイ高校生活をおくったわけではない私なのに、この小説を読んでいると、自分の高校時代も輝いていたかも?と錯覚してしまいそうな嫌味でない青春賛歌です。