昭和30年代


読み返していた中野翠さんの本の中に昭和30年代を懐かしむ風潮に疑問符を投げかける言葉が。自分の中でもやもやしていた気持ちが中野さんの言葉でクリアに整理されました。


以下は引用です。

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私は不思議でたまらない。そんなに昭和三十年代が恋しいなら、実際に出来るだけ昭和三十年代の生活様式で暮らせばいいじゃないか。少しばかりスピードをゆるめるだけでもいいじゃないか。「あのころ」には人情があった、人と人との触れ合いがあった、ものを大切にする心が合った・・・・などといって涙を流すくらいなら、さっさと昔風の生活に切れかえればいいじゃないか、と。クルマ、洋間、水洗トイレ、エアコン、パソコン、コンビニ、スタバ、ケータイ・・・・と何のためらいもなく飛びついて来たというのに、何を今さら・・・・と不思議に思うのだ。
 「スローライフ」だの「ロハス」だのと言ってガンバルのは好きではない。洋服のハヤリには乗るけど、思想や生活スタイルのハヤリには乗りたくないのだ。

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「昔はよかった」の言葉はライフスタイルだけでなく、専門の食の世界でもありえないと常に思っています。昔のトマトは美味しくなかったし、昔の日本酒も美味しくはありませんでした。昔の米は今ほど洗礼されていなかったし、昔の野菜のバリエーションは今ほど豊ではありませんでした。昔の豚肉はもっと臭みがあったし、昔日本には今のようにたくさんの種類の肉が手に入ることはありえませんでした。


昔を懐かしむことに自己陶酔する年寄りにはなりたくないもんです。