ニューヨークのベーグル


恥ずかしながら海外に10日以上滞在したことがあるのは、20代半ばのアメリカ、カナダに半年、以来全くありません。外国の思い出といえば、ほとんど20数年前のあの時の夢のような日々に頼るだけです。


1980年のニューヨーク滞在一ヶ月強は、仕事でもパッケージ・ツアーでもなく、ただただ自由な時間をめいっぱい毎日楽しめる至福のときでした。ブロードウェー42丁目から2-3ブロックしか離れていない、「オンボロ×4」クラスのホテルのすぐ隣は、当時封切られた”FAME”(アラン・パーカー監督)の舞台となった音楽学校。映画館で見てきた風景が日常的に見られる場所でした。


朝ご飯はいつの間にか、何ブロックか離れたユダヤ人がたくさんいる場所のカフェテリアに落ち着きました。肝っ玉母さん風の奥さんが怖い顔でにらみながら「グッ、モォォォニング、ハニー 今日はなんにするの?」


そのカフェテリアで初めてお目にかかったのがベーグルでした。半分に切ってこんがり焼き、簡素にバターがついていただけだっか。ともかく最近流行の何かはさむものがなくてもベーグルそのものの食感がもっちり歯ごたえがあって旨みが濃くて美味しいのです。毎日食べても飽きません。カリフォルニアやシカゴ近辺ではその当時見かけた覚えがないベーグルは、ニューヨークのユダヤ人街だったから当たり前にあったのか?今となっては確かめようもありませんが、ともかく私のニューヨークの朝はベーグルで始まるのでした。


昨日マーケットで、「バターも玉子も使わない健康にいいベーグル」とワゴン販売をしていました。一時流行ったベーグルも近頃あまり見かけなくなったので試しに手にとって見ると、やっぱりそれは「日本人向け」のベーグル。モッチリ感も中途半端、味わいも中途半端に軽め、美味しくありません。日本人風にアレンジした食材に美味しかったものは私には何一つありませんでした。たぶん、作っている人も、プロデュースした人もちゃんと美味しいベーグルを食べたことがないんでしょうね。とはいえ、私だってニューヨークで食べてだけなんですが。。。。