セレブその2


昨日セレブのことを書いて後つらつらと考えてみると、今ポンニチメディでもてはやされ、憧れるセレブというのは、どうやら本人が稼いでいるかどうかに関係なく、単に「使える手持ちのお金がたっぷりあって優雅に暮らせる人」というだけのことのような気がします。


欧米での本来の意味で言えば、セレブというのは「一つの分野で一家を成し、それにともなって金銭面でも潤っている有名人」であるようです。なにより一家を成していることが重要で、ただの金持ちもしくは家族が金持ちではセレブというのかどうか。



私ン処のお得意様に「最初に(意識して)飲んだシャンパンがサロン1988 最初に(意識して)飲んだ赤ワインアンヌ・グロ リッシュブルー1988」という女性がいます。それだけを聞けばかなりのポンニチセレブ。「金に任せてヤナ感じ」と思われても不思議ではないかもしれません。


が、この女性、自分で高価なものを要求するのではなく、エスコートする男性に「この人にはちゃんとしたものを飲ませてあげたい、食べさせてあげたい。楽しませてあげたい」と思わせる雰囲気を持っているのです。料理人の私もこの女性においでいただくと「この方には・・・」と同じように強く思います。お酒の知識も料理の知識も「薀蓄」「こだわり」のレベルで持っていらっしゃるわけではないのに、感性で良し悪しを鋭く見分けてしまいます。美味しい物を正しく理解できる方に「このお酒は○年の熟成を経た稀少品で・・・」というような講釈を語る必要はありません。飲んだ瞬間のウットリとした顔を拝見すればそれ以上はいらないのです。


なによりこの方の素晴らしいのは、「親方に任せておけば間違いなく美味しい物しか出てこない」という絶対的信頼をゆるぎなく持ってくださり、それが言葉に表さなくても見えることです。そういう信頼にこたえない訳にはいきません。


もちろん、ある分野では一家を成した方、自分の仕事に誇りをもっていらっしゃいます。男性を見る目も肥えたこの方をエスコートするのは、むろんえこひいきを見せてはいけない板前もその席から離れたくないと思わせるほど魅力的な方です。こういうのをセレブの素養とよびたい気がします。