とうちゃんかあちゃんの店


世の中グローバル化が進み、経営効率、世界戦略・・・などなど大きな組織が生き残り、弱小企業はバタバタと倒れる時代はますます加速化しています。とうちゃんかあちゃんのこじんまりした店では危機はなおさらのことです。


が、
しかし、前回お話したような「おすがりする」力のある酒屋さんのすべてはまさにとうちゃんかあちゃんのこじんまりした店なのです。


昨日、休日を利用して酒舗よこぜきさんに伺ってきました。車で二時間弱、それだけの距離が苦にならないほどこの店で得られるものは大きいのです。


店舗の広さ自体はその品揃えから考えると驚くほど小さいのですが、温度管理すべき酒を貯蔵する倉庫の広さは想像を絶します。ご主人は地酒ブームのさきがけとして全国に名前の知られた方で、この店の名前をしらない酒屋さんはもぐりといってもいいでしょう。昔のブームのさきがけでトップを走っていた方が、未だにその頃の酒のしがみついているケースもたくさんあるなかで、よこぜきのご主人は常に全国の蔵に目を配り最先端を走り続けているだけでなく、自社で寝かせている様々な温度設定の古酒は、当の蔵元杜氏さえ知らない日本酒の熟成の世界を切り開いています。


なによりすごいのは、とうちゃんかあちゃんの店の多くが、突っ走るとうちゃんをバックアップだけのかあちゃんの存在のが当たり前なのに、この店のかあちゃんは普通の酒屋10軒分以上の日本酒とワインの知識と経験の力量を持っていて、まったくとうちゃんに引けを取っていないのです。さらにさらに素晴らしいのは次代を担う跡継ぎの若いとうちゃんかあちゃんも同じ力をもっているのです。つまり二世代のとうちゃんかあちゃん四人全員が普通の酒屋さんの数倍の見識を同等に持っていて、誰にお酒の話を振っても薀蓄に富んだ私なんぞあずかり知らない奥深い答えが返ってきます。


とはいえ、手前味噌ではありますが、凄腕の四人のとうちゃんかあちゃんの力を引き出すには、お酒を分けていただく側の力量もそれなりに必要なわけで、「あの酒屋さんいいよ」と出かけても、冷蔵庫をみて「これとこれください」とか、よくても「お奨めをください」くらいではこの店の底力を知ることはできないのです。私ごときは10年弱のお付き合いをしていても、未だにとうちゃんかあちゃんの持っている力を全部理解したとは全く思っていません。まだまだ引き出しが無限にあるのが素晴らしいのです。


何度もとうちゃんかあちゃんと呼び続けましたが、よこぜきのとうちゃんかあちゃんは揃っておだやかで品が良く、とうちゃんかあちゃんではなくて「ご主人」「奥様」「若旦那」「若女将」と呼ぶのが当然の品位をもっていらっしゃることを言っておかなくてはいけません。「人柄が酒をよぶ」というのはこのご家族をみればよくわかります。



この店の素晴らしさを理解できるかどうかは、酒通としての基準になるといって間違いありません。グローバル化だろうが、世界戦略だろうが、正しいとうちゃんかあちゃんの店は間違いなく生き続け進化し続けると信じられそうな気がしてきます。